「個別最適な学び 協働的な学び」をテーマに、東京都中野区の宝仙学園小学校(西島勇校長、児童449人)で11月24日、公開授業研究会が行われた。同校教員と香里ヌヴェール学院小学校の樋口万太郎教諭、関西学院初等部の宗實直樹教諭ら特別講師による8本の公開授業とパネルディスカッションが行われ、授業デザインや子どもの見とりについて意見が交わされた。
同校では今年度、児童自身が問いや課題を「みつける」、児童自身が「きめる」、児童同士がつながって考えを「つむぐ」という3つのキーワードを研究テーマに、日々の授業に取り組んでいる。この日の公開授業研究会には、全国の私立・公立小学校の教員をはじめ、教育関係者約100人が参加。パネルディスカッションには樋口教諭、宗實教諭、新潟大学附属新潟小学校の中野裕己教諭、横浜国立大学教育学部附属鎌倉小学校の荒谷舞教諭が登壇した。
普段、どのように授業デザインを考えているかについて、宗實教諭は「個別学習が得意な教員も、一斉授業が得意な教員もいる。どんな子どもを育てたいかという上位概念さえ理解していれば、どのような方法でも柔軟に考えたらいいのではないか」と考えを示した。それに対し、荒谷教諭は「私もゴールを大事にしていくことが重要だと思う。例えば、算数で言えば問題が早く解けるとか、公式が使えるかだけではなく、どういった数学的な見方や考え方ができるのかを育てていくことが、社会で生きていく力につながっていく」と述べた。
中野教諭は「今まで一斉授業をベースとしてやってきたものを、一気に全て変えるというのは難しい。私も授業は柔軟に考えるべきだと思っているので、授業をつくるときには、どの部分を子どもに渡そうかということを考えるようになった」とアドバイスを送った。
また、樋口教諭は「社会に出たときの資質能力を育てるために、主体的・対話的で深い学びを実現していくことが必要だし、そのために個別最適な学びや協働的な学びがある。私はこういう関係性があると考えているが、今は個別最適な学びや協働的な学びという、方法だけに目がいきがちになっていないだろうか」と問題提起した。
子どもたちの評価や見取りについて、樋口教諭は「1人1台端末が導入され、子どもたちの考えていることを可視化できるようになった。教員は授業中に前に立っているのではなく、もっと歩き回り、子どもたちが今何を考えているのかを把握して、フィードバックしていくことが重要だ」と強調。中野教諭もこれに同調し、「成果物で見取ることも大事だが、授業の中でどれだけ見とっていくかが重要ではないか。例えば国語だと、文章のどこに線を引いているのか、色分けしているかなど、子どもたちが何を考え、どう行動したり、工夫したりしているのかを見取っていきたい」と述べた。
宗實教諭は「子どもたちにはそれぞれ思考の癖があるが、それは接続詞によく現れると感じている。『つまり』を使ってまとめて話すことが得意な子や、『例えば』を使って具体化するのが得意な子がいる」と独自の視点を紹介。思考の癖などから「教員や周りの子が、その子の得意や苦手を分かってくれるという他者理解がクラスの中でできてくるといいのではないか」と語った。