子どもの頃に受けた虐待が大人になってからも精神的、経済的にさまざまな影響を与えている問題について、児童虐待被害者の支援を行う(一社)Onaraはこのほど、虐待にあっていても里親や児童養護施設などの社会的養護につながらなかった当事者に行った、初めての実態調査の結果を公表した。死にたいという思いを抱く希死念慮が「ある」と答えたのは9割に上るなど、多くの人が生きづらさを抱えていた。
調査は9月3~30日に実施。18歳以上の683人が回答した。回答者が受けていた虐待の種類を複数回答可で尋ねたところ、▽身体的虐待 63.1%▽心理的虐待 92.1%▽ネグレクト 39.7%▽性的虐待 36.0%――だった。これに加え、信仰を理由にした宗教虐待(15.5%)や子どもの受忍限度を超えた勉強を課すなどの教育虐待(33.5%)も確認できた。虐待を行っている加害者は母親が最も多く83.2%、次いで父親が68.1%だった。
虐待を認識した時期が20歳以上である割合は50.5%に上り、虐待を認識した時点で社会的養護の支援を受けられない年齢に達していた。
精神科や心療内科、メンタルクリニックを受診したことが「ある」と答えたのは84.3%と高く、長期的なトラウマ経験をきっかけにして、感情の調整や対人関係に困難を抱える複雑性PTSDと診断された人は34.5%を占めた。トラウマ治療を受けたことがあると答えた人は20.7%だったが、治療を受けた人の47.1%はトラウマ治療による効果があると答えていた。
また、2022年度の年収が100万円以下は21.7%、収入なしは31.7%で、16.4%が生活保護を受給しているなど、経済的に非常に厳しい状況に置かれている人が多いことも分かった。
さらに、希死念慮が「ある」と答えたのは91.6%、自殺を考えたことが「ある」と答えたのは91.1%、自殺未遂をしたことがあるのは61.3%と、いずれも非常に高い割合だった。
これらの調査結果を踏まえ、Onaraでは近く、こども家庭庁などに対して▽支援に向けて改めて国として実態調査を行う▽こうした人たちが意見表明をする機会を設ける▽里親や児童養護施設などを出た人が対象となっている社会的養護自立支援事業を、これらの人たちにも拡充する▽トラウマ治療へつながりやすくする医療体制を整備する▽子どもの権利教育として、子どもも大人も児童虐待について学ぶ機会を充実させる――などを要望する予定。