年内のこども大綱の閣議決定に向け こども家庭審が答申

年内のこども大綱の閣議決定に向け こども家庭審が答申
加藤担当相に答申を手渡すこども家庭審議会の秋田会長(手前右)=撮影:藤井孝良
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 こども家庭審議会は12月1日、岸田文雄首相からの諮問を受けて検討してきた「今後5年程度を見据えたこども施策の基本的な方針と重要事項等」や「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なヴィジョン(仮称)」「こどもの居場所づくりに関する指針」を答申した。「今後5年程度を見据えたこども施策の基本的な方針と重要事項等」は「こども大綱」のベースとなるもので、こども基本法の理念を「こどもまんなか社会」として体現していくため、こどもの権利を中心に据えた内容となっている。ヴィジョン、指針と合わせて年内に閣議決定することを予定している。

 複数のこども家庭審議会の立ち合いの下、秋田喜代美会長(学習院大学文学部教授、東京大学名誉教授)から答申を受け取った加藤鮎子こども政策担当相は「こども家庭審議会の中には20代の若い方々も入られて、当事者の視点からの意見もいろいろいただきながら取りまとめいただいたものと承知している。そういった大変重たい大事な答申だと思っているので、しっかり受け止めさせていただきたい」と述べた。

 「今後5年程度を見据えたこども施策の基本的な方針と重要事項等」は政府の掲げる「こどもまんなか社会」の実現に向けて、既存の「少子化社会対策大綱」「子供・若者育成支援推進大綱」「子供の貧困対策に関する大綱」を一本化した上で、こども・若者や子育て当事者の視点から関連政策の基本方針を描いた。特に重要事項はライフステージ別の重要事項とライフステージを通した重要事項に整理。ライフステージ別の重要事項のうち、「学童期・思春期」では公教育の再生やいじめ防止、不登校のこどもの支援、体罰や不適切な指導の防止、高校中退の予防などの観点を盛り込んだ。その上で、こども施策を推進するために必要な事項として、国や地方でこども・若者の社会参画・意見機会の充実を進める必要性を明記した。

 「幼児期までのこどもの育ちに係る基本的なヴィジョン」は、こどもの誕生前から幼児期までの「はじめの100か月」が、生涯にわたるウェルビーイングの向上に最重要であるという認識を社会全体で共有し、関連施策の推進に向けた羅針盤となるもの。乳幼児の時期からこどもの権利と尊厳を守り、アタッチメント(愛着)や豊かな遊びと体験による安心と挑戦の循環を通じて、こどものウェルビーイングを高めること、学童期も含めた切れ目のない支援、保護者・養育者のウェルビーイングの支援、こどもの育ちを支える環境や社会づくりなどの方針を定めた。ヴィジョンの実効性を高めるため、こども大綱の下に策定される「こどもまんなか実行計画」に施策を反映していくことなどを求めている。

 こども食堂や児童館、学校など、多様なこどもの居場所について国の考え方を示した「こどもの居場所づくりに関する指針」は、こどもの居場所づくりを「ふやす」「つなぐ」「みがく」「ふりかえる」の4つの視点で循環的に充実させていくイメージを示した。その上で▽こどもの声を聴き、こどもの視点に立ち、こどもとともにつくる居場所▽こどもの権利の擁護▽官民の連携・協働――を各視点に共通する事項に据え、国や自治体、民間団体・機関、学校、企業などの責務と役割を示した。

 今後、政府は「今後5年程度を見据えたこども施策の基本的な方針と重要事項等」を踏まえ、こども大綱を策定。年内にヴィジョンや指針と合わせて閣議決定される見込み。

 こども大綱が策定された後には、こども向けに大綱の内容を解説したものも作成される予定で、記者団の取材に応じた秋田会長は、こどもたちに向けて「皆さんの声を入れてつくったこども大綱になる。これからもっと分かりやすいものを準備しようと思っているが、それも大人が考えるのではなくて、ぜひこどもの皆さんも『こうすれば他の子もよく分かるかな』と、一緒に考えてくれるような、こども参画で分かりやすいものをつくりたいと個人的には願っている」と意欲的に語った。

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