学校でのいじめ被害経験 10代のLGBTQ当事者の4割近くに

学校でのいじめ被害経験 10代のLGBTQ当事者の4割近くに
iSttock.com/Ada daSilva
【協賛企画】
広 告

 4割近くの10代のLGBTQ当事者にいじめの被害経験があることがこのほど、生命保険会社のライフネット生命保険が行ったLGBTQ当事者への意識調査で明らかとなった。性自認や性的指向について学校で相談したことのある割合は10代で最も高いなど、前回までの調査と比べると変化の兆しも伺える結果となった。

 調査は2016年、19年に続いて3回目。22年12月1日~23年4月21日にLGBTQ当事者1万449人に実施し、そのうち10代は4.4%を占めた。

 学校生活に関する質問に着目すると、「いじめ被害の経験あり」と答えた10代当事者の割合は38.8%で、16年調査(49.4%)や19年調査(47.4%)と比べると減少していた。「『女(男)らしくない』『おかま』『ホモ』『レズ』などと言われたこと」「無視や仲間はずれにされたこと」「無理やり服を脱がされたこと」といったネガティブライフイベントを経験した人のうち、「自身の一連のネガティブライフイベントを知っている人・目撃している人がいた」と答えたのは68.6%に上った一方で、「助けてくれる人・かばってくれる人がいた」と答えたのは26.6%にとどまった。

 同社から調査を委託された宝塚大学看護学部の日高庸晴教授は「いじめ被害の経験は、16年と19年ではほとんど変わらなかったのが、22年ではそれなりに減っているように見える。学校でのいじめ防止対策やLGBTQに関する情報が入ってきたことが影響しているかもしれないが、これをもって減少傾向とまでは言い切れない。次の調査の時点でこの割合がどうなっているか注視する必要がある」と慎重な見方を示す。

 また、今回の調査では初めて、学校生活の中で性的指向や性自認について相談したことがあるかも尋ねた。その割合を世代別にみると10代は29.4%、20代は10.7%、30代は5.8%と、若年層ほど高くなっており、特に用事がないのに保健室へ行ったことがある割合も10代は32.9%と最も高くなっていた。

学校生活の中で性的指向や性自認について相談した割合(世代別)
学校生活の中で性的指向や性自認について相談した割合(世代別)

 日高教授は「今の10代では、話しやすくなっている、話題にしやすくなっている面があるのかもしれないということが伺える」と指摘。「教員約2万2000人に対して行った別の調査では、7割がLGBTQに関する基礎的なことを知らないまま対応を迫られている状況が浮き彫りになっている。LGBTQに関する教員の研修機会が以前より増えたとはいえ、コロナ禍で研修そのものや対面研修の機会が減っている。一部の関心のある教員に任せるのではなく、誰もが一度は学ぶように教員研修を見直す必要がある。さらに言えば、教員養成課程や人権教育の中に、LGBTQについての内容を入れるようにすべきだ」と提案する。

広 告
広 告