障害への理解を深め、障害者の社会参画を促す「障害者週間」に合わせ、東京都世田谷区にある東京農業大学稲花小学校に開設されている放課後の居場所「農大稲花アフタースクール」で12月6日、視覚障害のある参天製薬社員の鳥居健人さんが講師を務める体験型プログラムが開かれた。子どもたちは目隠しをした状態でパズルをはめたり、白杖を使って点字ブロックの上を歩いたりしながら、視覚障害の人にどんな支援ができるかを考えた。
このプログラムは2020年に「農大稲花アフタースクール」を運営する「放課後NPOアフタースクール」と参天製薬が共同開発したもので、この日は「農大稲花アフタースクール」を利用している同小児童の中で希望した小学1~4年生の17人が参加した。
ブラインドサッカー男子日本代表選手としても活躍している鳥居さんは、子どもたちに自分の障害のことや実際に使っている白杖などを紹介。その後、子どもたちはアイマスクを着けて、0~9の数字のブロックを、その数字の形をした板のくぼみにはめる作業に挑戦した。目隠しした状態ではとても時間がかかり、いかに普段は視覚から入ってくる情報に頼っているかを実感すると、今度はペアになって、アイマスクをしていない隣の子が声で教えながら、同じ作業をし、声の手助けがあるとやりやすいことに気付いた。
そばで声を掛ける側のポイントとして、鳥居さんは始める前に数字のブロックを整理整頓し、板がずれないように手で押さえておくことや、「右・左」「上下逆さ」など、丁寧に説明することを心掛けるとよいことをアドバイスした。
次に子どもたちは再びペアになって、一人はアイマスクを着けて白杖を握り、もう一人は横に立って誘導しながら、点字ブロックの上を一緒に歩く体験を行った。
最後に鳥居さんは、一人だけで駅などにいるとき、男子トイレが左右どちらにあるのか迷ってしまったり、自動販売機でどのボタンを押せば飲みたいものが買えるのか分からなかったりするといった、日常生活の中での困り事を具体的に挙げ、どうしたら解決できるかを子どもたち同士で話し合ってもらった。
点字に興味があり、プログラムに参加したという同小3年生の滝澤まほろさんは「目の不自由な人の気持ちがとてもよく分かった。目の前の信号が赤なのか青なのかを、周りにいる人が教えてくれるだけで安心できるということを教えてもらったので、これからそういう人と出会ったら私も声を掛けたいと思った」と振り返った。
鳥居さんは「見えないことを子どもたちに伝えるには、体験してもらうことが一番だと思う。体験してもらうことで分かることがあり、視覚障害への理解が広がる。まずは知ってもらうことが大事で、知らないと興味も湧かない」と、体験の重要性を強調する。