東京都教育委員会は12月7日、今年度の第2回東京都いじめ問題対策連絡協議会を開催した。都内の国公私立学校におけるいじめの認知件数は全国同様に増加傾向にあり、出席した委員からは学校現場や関係機関の取り組みの現状と課題が報告された。府中市立府中第六中学校の佐藤光宏校長は「SNSに関係するいじめやトラブルが依然として多い。各校では早期発見のための措置や道徳教育の充実など、未然防止に関する取り組みに重点が置かれている」と述べた。
冒頭、浜佳葉子教育長は都のいじめ問題対策に関する現状について報告。今年10月に公表された文科省の2022年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果において、都内の国公私立学校におけるいじめの認知件数は6万7269件で前年比11%増と、全国同様に増加傾向だった。これに対し、浜教育長は「いじめそのものが増えているというよりは、各学校において教職員が見逃しがちないじめを積極的に認知した結果であるとも考えている」と述べた。
また、同調査におけるいじめられた児童生徒の相談状況に関して「誰にも相談していない」を選択した割合は、都内の全公立学校は平均2.5%で、全国平均4.5%に比べると2ポイント低かった。これに関し、都ではSOSの出し方を学ぶDVD教材を開発し、18年度から都内の全公立学校において授業を実施したり、ロールプレー形式の教員研修プログラムを提供したりしており、浜教育長は「全国平均より少ないのは、SOSの出し方に関する教育を推進していることも背景にあるのではないか」と考えを示した。
その後は、学校現場や関係機関からいじめ問題対策に関する現状と課題が共有された。府中第六中学校の佐藤校長は、東京都中学校長会生徒指導部での610校全校に対するアンケート調査結果を報告。「いじめについて学校の現状に近いものを一つ答える」という質問では「一部にはあったが、現在は解決している」という学校が35.9%、「発生は繰り返すがその都度解決している」が43.4%だった。
一方で「一部で継続しており、現在もその解決に向けた対応を継続中である」が10.7%、「深刻な問題となっており、関係機関等の支援を受けながら解決を図っている」が1.6%と、解決の困難さも見られるとした。
いじめ防止対策推進法の4つの具体策の中で、さらに充実させる必要があるものとしては「インターネットを通じて行われるいじめに対する対策の推進」が42.8%と最も多かった。佐藤校長は「SNSに関係するいじめやトラブルが、依然として多い実態がある。また、早期発見のための措置や、道徳教育の充実など、未然防止に対する取り組みも増加傾向にあり、以前に比べて重点が置かれている」と分析した。
他にも、いじめ防止のために設置された校内組織の定例会議などは、6割近い学校が月に1回以上実施しており、いじめに関する生徒へのアンケート調査についても年3回以上実施している学校が約9割に上っていた。
スクールカウンセラーとの連携について報告した東京公認心理師協会の上野綾子理事は「現在、東京都には全公立学校にスクールカウンセラーが配置されている。これは全国をみても東京都だけで、かなり恵まれた状況にある」と話した。
また、スクールカウンセラーが開催する研修会などでは、学校現場から「コロナ5類移行後にいじめの件数が増えている」との声が上がっており、「コロナ禍のマスク生活や、人と距離をとることなど、集団活動から学ぶことが少なくなっていたせいではないか」と指摘。「今は家庭の力も弱く、家庭と本人と学校とだけでは解決しない問題もさまざまある。経済的な困窮から自己肯定感が下がる子どもも多く、学校以外の居場所づくりの必要性も感じている」と述べた。