僕たちの発信を未来につなげて――。全国の肢体不自由の特別支援学校高等部に通う生徒によるプレゼンテーションの大会「ミラコン2023~未来を見通すコンテスト~」のファイナルステージが12月13日、東京都豊島区の東京芸術劇場で開かれ、7人の代表生徒が思いを伝えた。生徒は自身の経験を基に、ドローンやAIなどの最新のテクノロジーを使った問題解決を提案したり、バリアフリーの課題を指摘したりしながら、これからの自分の生き方や社会の在り方を提言した。
2018年度から始まり、6回目を迎えた同コンテストは、今回から全国特別支援学校肢体不自由教育校長会と日本肢体不自由児協会の共催となり、新たにこども家庭庁も後援。37校から87人の生徒が応募し、各地区の予選を勝ち抜いた7人の生徒が各学校からオンラインで発表に臨んだ。
最優秀賞の文部科学大臣賞に輝いたのは、東京都立城南特別支援学校高等部3年生の遊佐一弥さん。遊佐さんはAIについて調べる中で「自分の身の回りのものでAIがあったらいいなと思うものがある。それは車イスだ」と思い付いたという。思うようにならない動きがあることで、車イスは手こぎのものではうまく進めず、電動のものは自分で運転ができないという遊佐さん。「電動車イスにAIを搭載することで、私のように不随意な動きがあっても安全に運転できるようになるのではないか。AI搭載の安全アシスト車イスだ」とアイデアを披露した。
優秀賞に選ばれた群馬県立あさひ特別支援学校高等部3年生の赤尾真誠さんは、映像クリエーターの古郡康聖さんとの出会いをきっかけに、撮影だけでなくさまざまな場面で活用が広がっているドローンに興味を持った。赤尾さんは「私の障害の場合は、物を持ったり運んだりということが少しずつ難しくなっていく。私は日常生活で必要な動作を家族に手伝ってもらうことが多く、家族に負担を掛けずに身の回りのことを自分でしたい気持ちがある」と打ち明け、家庭の中で使うことを想定した、手の役割をする小型ドローンのイメージ図を提示した。
奨励賞になった福井県立福井特別支援学校高等部3年生の豊田姫菜さんは、SNSで車イスに乗ってライブに参加する人が目に留まり、自分も挑戦しようと決心。体力づくりやSNSで同じグループが好きな友人とつながるなどして、念願のライブに行くことができた。「実際に行ってみると、私自身に変化があった。それは、目標を立てて苦手なことに向き合ったことで、できることが増え、自立に向けて意欲が高まったことだ。今までは人見知りだったが、知らない人にも声を掛けることができるようになった。これらは私の大きな自信につながった」と成長を実感した豊田さん。そこで感じた課題として、障害のある人が宿泊できるユニバーサルルームを備えたホテルが少ないことを挙げた。
会場からの投票で決まる観客賞と表現力賞をダブル受賞した岡山県立早島支援学校高等部3年生の藤井雄太郎さんは、尊敬している歴史研究者の磯田道史さんによる企画展が開かれているというので、会場の岡山城に行ったが、階段が多くて入場を諦めざるを得なかったエピソードを紹介した。
藤井さんは「岡山城は昨年11月に大改修を終えたばかりなので、僕自身複雑な気持ちになった。昔のままを再現したい気持ちも分かる。でも、個性が尊重される今だからこそ、もっとバリアフリーを進め、もっと多くの人に喜んでもらうべきだ」と指摘。「バリアフリーは少しずつ進んでいる。しかし、岡山城のように僕たちが望んでいるところまで進んでいないことも少なくない。だからこそ、僕たちが発信していかなければならない。僕たちは何も難しいことはお願いしていない。ただ、現状を変えて普通に過ごしたいだけだ。僕たちの発信を受け止めて未来につなげてもらえないだろうか」と訴えた。