児童が「自学ノート」に自殺をほのめかす記述をしていたにもかかわらず、教諭が花丸を付けていたなどのいじめへの不適切な対応を巡り、奈良市教育委員会は12月19日までに、一連のいじめ重大事態に関する調査報告書を公表した。被害児童の心的外傷後ストレス障害などの症状は、いじめだけでなく学校などの不適切な対応も原因となっているとした。
調査報告書によると、この奈良市立小学校では2021~23年にかけて、在籍する児童に対し、別の児童が暴力を振るうなどの度重なるいじめが起きていた。被害に遭った児童は22年5月ごろから登校への不安を訴えるようになり、その後、適応障害や心的外傷後ストレス障害と診断。23年1月~3月にかけて、30日を超える長期欠席をせざるを得なくなり、23年4月以降も心的外傷後ストレス障害の症状が続き、学習環境への配慮が必要な状態となっていた。
被害に遭った児童の心的外傷後ストレス障害などの症状について、報告書では、いじめ行為はもちろんのこと、学校や教育委員会の対応の不十分さにも原因があったと指摘。加害児童に必要な指導が行われていなかったことや、形式的な謝罪でひと段落したと判断していたこと、いじめについて校内で報告・共有が十分に行われていなかったことなどを挙げた。
さらに、報告書では22年6月末ごろに、被害児童が「自学ノート」に「わたしは死ねばいいのに」「死ねばいいな、自分なんて、いなければよかった」などと記述しているのを担任が確認していたが、それに対し花丸を付けて「You can do it!」とコメント。この記述について管理職への報告や保護者への連絡をしていなかったのは不適切であり、保護者の不信感を招いたと指摘した。
報告書では再発防止策として、いじめの疑いが生じたら初期対応の段階から学校内で迅速な情報共有を行うこと、被害を受けた児童や保護者の訴えを受け止め、適切な見守りや寄り添った対応をしていくことなどを求めている。