改正児童福祉法の施行に向けた対応を進めているこども家庭庁は12月26日、こども家庭審議会児童虐待防止対策部会の第3回会合で、新たに策定する一時保護施設の設備・運営基準案について、施設に入所したこどもの通学支援などを努力義務として自治体に求めていく形に変更したことが報告された。ヤングケアラーについても、支援体制の強化のため、新たに子ども・若者育成支援推進法に規定する方針が示された。
虐待の疑いなどによって、こどもの生命や権利が脅かされていると児童相談所が判断した場合に、措置方針が決まるまで生活することになる一時保護施設を巡っては、これまで設備・運営基準が存在せず、児童養護施設のものを準用してきた。しかし、一時保護所でのこどもの権利や学習の保障、生活環境の改善に向けて、改正児童福祉法を踏まえて、一時保護施設の設備・運営基準の策定作業がこども家庭庁で進んでいた。
一時保護施設の設備・運営基準は、国の基準が定められた後、各自治体で条例を定めることとされている。前回会合の際に示された基準案では、入所しているこどもの通学支援は「当該児童の希望に応じて、就学等できるように努めなければならない」とされたものの、地域の実情に応じて異なる内容を定めることが許容される「参酌基準」とされ、委員から疑問の声が上がっていた。
これを受け、この日の会合で示された修正案では、「一時保護施設は、学校に在籍している児童が安心して教育を受けられるよう、当該児童の希望、置かれている環境その他の事情を勘案し、通学の支援その他の必要な措置を講ずるよう努めなければならない」と変更し、参酌基準から、条例で必ず適合しなければならない「従うべき基準」と位置付けが変えられた。
合わせて見直される一時保護ガイドラインでも、一時保護施設のこどもや社会的養護経験者から聞いた意見を基に、一時保護施設での生活上のルールについて、定期的に見直したり、こどもに分かるように明記したりするといった変更を行う。
基準案は24年1月にパブリックコメントが行われ、3月には公布される見込み。
また、この日の会合では、ヤングケアラーへの支援について法律上明確な根拠規定を設けるため、子ども・若者育成支援推進法に「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と新たにヤングケアラーの定義を明記し、「要保護児童対策地域協議会」と「子ども・若者支援地域協議会」が連携を図るよう努めると規定する制度改正案が示された。
このヤングケアラーの定義について川村涼太郎委員(NPO法人おおいた子ども支援ネット職員)は「『世話』が何を指すかという定義や範囲を慎重に定めていってほしい。世話を行うというと、一般的には動作的、行動的、物理的な意味合いで捉えられるが、ヤングケアラー支援ではそうした意味合いだけではなく、こどもが家族に対してそうせざるを得ない状況や背景があるが故に、日常的に過剰に心配する、遠慮する、気遣う、見守りをするといった、心理的・精神的な面も含まれる」と指摘。家族のメンタル面でのケアを行っているこどももヤングケアラーに当てはまるということを、広く浸透させていく必要性を強調した。