学びの多様化学校(不登校特例校)の設置促進に向け、文部科学省は12月22日にフォーラムを開き、全国の学びの多様化学校の好事例を紹介した。「学びの多様化学校マイスター」を委嘱された東京都八王子市立高尾山学園の黒沢正明校長をはじめ、日々不登校児童生徒と接している校長らが登壇し、児童生徒に寄り添った学びの環境作りなどについて語った。
開校20年目を迎える同学園の黒沢校長は「時数軽減をし、無理強いはしないが、できる限り地域と同じような教育課程を組んでいる」「体験活動を取り入れている」「調子が悪い時はプレイルームや相談室で過ごすこともできる。遊びの場と学びの場を子供たちがその日のコンディションで選べる」といった工夫を講じてきたことを紹介。
また「校内に適応指導教室と登校支援室を設置している」「小4から中3まで、子供の状況に合わせて4月に一斉ではなく、毎月受け入れている」「スクールソーシャルワーカー、児童精神科医と連携している」といった子供たちのケアの体制についても語った。
次いで、同じく学びの多様化学校マイスターとなった西濃学園中学校・高校(岐阜県揖斐郡)の加納博明学園長兼中学校長もスピーチ。同校では8割弱の生徒が寮生活をしており、生活的自立を目指していると語った。またスクールカウンセラーを常駐させ、2週間に1度カウンセリングを行っていることや、同カウンセラーがソーシャルスキル・トレーニングの授業を担っていることなども紹介した。
宮城県の白石市立白石南小・中学校(通称:白石きぼう学園)の我妻聡美校長は、児童生徒の「自分のペース」を最大限に尊重していることや、授業中のクールダウンを認めること、基礎学力を保障する時間とともに、体験活動の機会を充実させていることなどを紹介。教員同士で「この学校の必要性や、どう寄り添えばよいか、子供たちの成長を語り合う時間を多く取ることができている」と話した。
東京都の大田区教委は、御園中学校の分教室として設置された学びの多様化学校(みらい学園中等部)の取り組みを紹介。年間授業時数は標準(1015時間)より少ない980時間とし、毎日25分、国語・数学・英語で端末を活用した個別学習の時間がある。総合的な学習の時間と特別活動を合わせた「キャリア教育」という授業を設け、さまざまな分野で活躍している人を招いて将来の職業への視野を広げたり、職場見学や酪農・漁業体験、地域清掃活動などに参加したりする機会を作っているとした。
文科省児童生徒課の伊藤史恵課長は「学びの多様化学校を通じて、他の不登校の児童生徒への支援施策について考え、また安心して学べる学校を作り上げていく取り組みに、ぜひ生かしてほしい。社会の宝であり希望である子供たちが悩み、学校に行けない状況は一刻も早く改善しないといけない。子供たちが希望を持って支援につながり、学びの場を確保できるよう、文科省としても自治体や学校と協力していきたい」とあいさつした。