若者を祝う原点回帰からの創造 18歳の成人式への思い

若者を祝う原点回帰からの創造 18歳の成人式への思い
「CHOOSE YOUR LIFE FES」を企画した三浦さん(21年11月撮影)=撮影:市川五月
【協賛企画】
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 1月8日の「成人の日」を含む3連休には、全国の市町村で成人式が開かれる。改正民法の施行によって成年年齢が18歳に引き下げられてからも、成人式は従来通り20歳を対象としているところがほとんどだ。そのような中で、高校や児童養護施設、少年院などと連携してさまざまな教育プログラムを手掛ける(一社)HASSYADAI social(ハッシャダイソーシャル)は昨年3月、「CHOOSE YOUR LIFE FES #18歳の成人式」を初めて開催した。今年も3月に規模を拡大して開かれる。このイベントを企画したハッシャダイソーシャル代表理事の三浦宗一郎さんに、18歳の成人式に込めた思いを聞いた。

「これは俺たちがやるしかない!」

 「成年年齢が引き下げられるというのに、思っていたよりも社会では話題になっていないし、18歳自身が知らないところでいろいろなことが決まっていくような感覚があった。このタイミングだからこそ届けなければいけないことがあるのではないかと、ずっと考えていた」

 2022年4月1日からいよいよ成年年齢の引き下げが実施されるのを前に、三浦さんの胸中にはそうした問題意識が芽生えていたという。高校生や若者に大きな影響がある成年年齢の引き下げに対して、ハッシャダイソーシャルでも消費者教育教材「騙されない為の教科書」を制作するなど、新たな取り組みを始めていたが、三浦さんの頭の中ではもう1つのアイデアが芽生えていた。それが「18歳の成人式」だった。

 「本や論文で成人式について調べていくと、戦後に社会を担っていく若い人たちを応援して、日本を元気にしたいという大人たちのかっこいい思いが起源になっていると知った。『成人の日』の趣旨は『おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます』と法律にも書かれている。でも、そんなメッセージが込められていることを多くの人は意識していない。成人式をもう一度つくり直すことは、社会的に意義があることなのではないか。そしたらもう、『これは俺たちがやるしかないな!』って」と思い立った瞬間に体は動き始めていた。「国民がこぞって、自ら生き抜こうとする青年を祝い、はげますという原点を今の時代に合わせて再解釈してやるとしたら…人と出会える、音楽と出合える、言葉と出合えることが必要だ」と、次第に具体的なイメージも湧いてきた。

今の成人式は誰もが参加できるようになっているか?

18歳のための成人式「CHOOSE YOUR LIFE FES」=提供:HASSYADAI social
18歳のための成人式「CHOOSE YOUR LIFE FES」=提供:HASSYADAI social

 そしてクラウドファンディングの実施や賛同してくれる企業も集まり、急ピッチで準備を進めた「CHOOSE YOUR LIFE FES」は昨年3月、初開催にこぎつけた。北海道から沖縄まで、全国から約500人が都内の会場を訪れ、オンラインでも300人以上が視聴。ラップグループの「MOROHA」によるオープニングで幕を開けると、トークライブでは『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)で知られる作家の水野敬也さんやタレントの峯岸みなみさんが、成年になった18歳に熱いメッセージを贈り、ロックバンド「SUPER BEAVER」がフィナーレを飾った。

 「CHOOSE YOUR LIFE FES」は参加費が無料なだけでなく、交通費の補助も出る。着物やスーツといったドレスコードもなく、何かしらの白い服を着ればよい。そのようにした理由を三浦さんは「お金がなくて成人式に行けないという子もいるし、中学生時代に不登校だったから地域の中につながりがないという子もいる。自分たちが新しい成人式をつくっていく上で、意外と今の成人式って、誰でも参加できるようでそうでもないということをすごく感じた。できるだけ参加の障壁をなくしていこうと、プロジェクトメンバーにはすごく考えてもらった」と説明する。

 一方で、こんな思いもあったという。

 「体験格差を解消しよう。事情を抱えている子たちに何かをしてあげよう。それも大事だけれど、それよりも、みんなで一緒に面白いことをやろうという思いの方が強かった。僕らはあえて、楽しいというエネルギーが渦巻いている、そんな場をつくりたいということをとにかく大事にしていた。夢中になっている大人の背中を18歳に見せたかったのかもしれない」

18歳を応援したいというコンセプトの下に、多くのスタッフや協賛企業、クラウドファンディングが集まった=提供:HASSYADAI social
18歳を応援したいというコンセプトの下に、多くのスタッフや協賛企業、クラウドファンディングが集まった=提供:HASSYADAI social

いずれ18歳を応援する文化に、キーパーソンは高校の教員

 今年の「CHOOSE YOUR LIFE FES」は、さらにパワーアップしていく予定だ。「去年は会場の映像をオンラインで流すだけだったが、今年はオンラインで見ている人にも特別な体験を届けたい。オンラインだけの特別なアーティストも呼べたらと、企画を進めている。スポンサー企業の獲得やクラウドファンディングにも力を入れて、これだけたくさんの企業や大人たちが18歳を応援しているということが伝われば」と、青写真を描く。

 三浦さんにとって何よりうれしいのは、昨年参加した18歳が、今度はイベントスタッフとして手伝いたいと、すでに100人近く名乗り出ていることだ。

 「僕らは大人からさまざまな恩をもらっているけれど、本人になかなか返せないという『負債感』がある。でもそれを、今度は大人として次の世代に返していければいい。そういうサイクルが生まれている」

 そして三浦さんは、「CHOOSE YOUR LIFE FES」だけでなく、いろいろな大人がさまざまな形で18歳を祝い、はげます場が広がって、やがて日本の新たな文化になればいいと考えている。

 2年目を迎える「CHOOSE YOUR LIFE FES」を一人でも多くの18歳に届けるために、キーパーソンになるのは高校の教員だと三浦さんはいう。

 「先生の中で『この子には勧めた方が絶対いいんじゃないか』と感じたら、ぜひその生徒を誘ってみてほしい。そういう直感を働かせられるのは、普段から生徒と長い時間を過ごして、生徒のことをよく分かっている先生しかいない。そして僕らは、背中を押してくれた先生にその生徒が思わず感謝してしまうくらいの体験をつくってみせる。僕らはみんなで18歳を応援したいと思っているが、その『みんな』の中には、学校の先生も入っている」

 「CHOOSE YOUR LIFE FES」は3月22日に、東京都渋谷区の恵比寿ザ・ガーデンホールで開催される。近日中にクラウドファンディングも開始する予定だ。

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