東京都と公益財団法人東京都医学総合研究所は、学校の居心地を良くするための取り組みの効果検証に乗り出すことを決め、そのための協定を1月17日に締結した。学校の居心地に関する独自調査を実施したり、子どものメンタルヘルスに関する学校関係者向けの研修プログラムを開発したりし、学校の取り組みの効果を見極める。
両者が実施するのは「学校の居心地向上検証プロジェクト」。子どもの健康や発達の疫学研究に取り組んでいる同研究所の知見を生かした取り組みとなる。
都によると、インドでは「全校健康促進プログラムSEHER(セヘル)」という試みが実施され、▽子どもが匿名で投書できる意見箱の設置▽学校全体で行う活動についてのグループでの話し合い▽健康や学習に関して相談できるカウンセリングの場の設置――などの取り組みによって、子どものメンタルヘルスの改善やいじめ、暴力の減少といった効果が認められているという。
同プロジェクトはこうしたインドの先行事例を参考にし、都立高校1校をモデル校に選び、学校の環境や雰囲気、組織文化などの「学校風土」を得点化して測る世界的な尺度「School Climate Scale」を応用した独自の学校の居心地調査を実施する。すでにモデル校が行っているさまざまな取り組みが、学校の居心地の中でも特にどのような部分で効果があるのかといったことを1年程度かけて検証し、可視化していく。
併せて同研究所では、SEHERの効果を論文で発表した米ハーバード大学医学部のビクラム・パテル教授と連携し、学校関係者向けの研修プログラムを開発・実施する。
東京都子供政策連携室の担当者は同プログラムの狙いについて「学校現場でもいじめや不登校などの課題に対してすでにさまざまなことに取り組んでいる。それらがどんなことに結び付いて効果があるのか、現場の手応えを『見える化』することで、学校の活動に生かしていく」と説明する。