1月1日に発生した能登半島地震で学校再開のめどが立たない地域があることから、文部科学省は1月19日、被災した児童生徒の学びを継続するために必要な対応を整理して、関係する都道府県・政令市の教育委員会に周知した。それによると、まず学校に通学できない児童生徒一人一人に対し、定期的、継続的に連絡を取れる体制を確保するよう求めた。その上で、学校に通学できない場合には、保護者やNPO、関係機関、学習ボランティアなどと幅広く連携して学習の継続を図るように促した。学習の方法や工夫については、児童生徒を取り巻く環境に応じた対応を整理した。また、2次避難を検討している児童生徒の保護者に対し、住民票を移さなくても避難先の公立学校に通学できることなど、児童生徒の学習継続に役立つポイントを一覧にしたリーフレットも公表した。
盛山正仁文科相は同日の閣議後会見で、「現時点において、甚大な被害を受けた地域では、学校再開のめどが立っていないケースがまだある。あるいは2次避難も実施されている。(被災した)児童生徒が日々を過ごす環境は非常にさまざまだ」と述べ、学校の再開状況や地域の通信状態など児童生徒を取り巻く環境に応じた学習の継続が必要との見方を示し、留意すべき点を事務連絡として周知したことを説明した。また、被災した自治体への教職員の派遣について、全国の都道府県・政令市に可否を確認したところ、現時点で49団体から派遣可能との回答を受けていることも明らかにした。文科省によると、このうち、兵庫、宮城、岡山、熊本、三重の各県がすでに教職員を被災自治体に派遣している、という。
事務連絡では、学校が再開できていない場合や、学校が再開していても児童生徒が通学できない場合もあることを踏まえ、学習の継続にあたっては「何よりもまず、学校や教員が児童生徒の置かれている状況を適切に把握することが必要」と指摘。対面によって児童生徒の状況を直接把握することができない場合には、オンラインも活用して、学校や教員が一人一人の児童生徒と定期的、継続的に連絡が取れる体制を確保することを求めた。 その上で、児童生徒が学校に通学できない場合には、学校以外の場所であっても学習が継続できるように、保護者、避難所などで学習支援を行うことができるNPO、関係機関、学習ボランティアなどと幅広く連携して可能な限りの協力を依頼し、実施可能な学習の継続を図るように要請した。
被災した児童生徒の学習方法や工夫については、児童生徒を取り巻く環境に応じた対応を学校の再開状況と児童生徒の登校の状況に応じて分類した。
学校が再開しているが、通うことができない児童生徒への支援は、さらに教科書・教材が使用できるか、ICT端末が使用できるか、によって対応が分かれている。例えば、ICT端末が使用できる場合は、避難所で学校の授業のリアルタイム配信や録画した授業の配信を活用して学習継続する取り組みを挙げた。ICT端末が利用できないケースには、教員が児童生徒を訪問できる場合には、授業で使用したプリントやワークシート、板書の写しなどを児童生徒に定期的に届け、児童生徒が自主学習を行う取り組みなどを示した。
学校が再開していない場合には、「児童生徒の学習基盤が整っておらず、心理的な安全性が十分に確保されていない可能性も高い」として、児童生徒と定期的、継続的に連絡を取れる体制を確保し、状況の把握に努めることが重要だとした。具体的な取り組みとしては、「勤務可能な教員がいる場合には、連絡手段を確保した上で、児童生徒の学習に向かう気持ちを醸成しつつ、個々の状況に応じて学習に向けたアドバイスを行う」「児童生徒が自宅や避難所にいることから、保護者や避難所の学習ボランティアなどの積極的なサポートも検討する」と例示した。
事務連絡では、児童生徒に1人1台整備されているICT端末を使ってオンラインで学びを継続できる学習コンテンツとして、NHK for Schoolや民間事業者から無償提供されている動画教材のリンク集を文科省のホームページで公開したことも伝えている。
また、2次避難を検討している児童生徒の保護者に向けたリーフレットで、2次避難先の市町村で公立の学校(小学校、中学校、高校、特別支援学校など)に通うことができると説明。▽住民票を移さなくても、学校に通うことができる▽学籍を元の学校に置いたままにすることも、避難先の学校に移して転校することもできる▽手続きに必要な書類が整わなくても、事後提出で通うことができる▽避難前に通学していた学校が再開した際には、元の学校に戻ることができる▽避難先でも、教科書やICT端末、心のケアなどの支援が受けられる▽家計が急変した場合には経済的支援を受けることができる▽就学前の子どもは避難先の幼稚園、認定こども園、保育所などで一時預かりを無料で利用できる--といった情報を整理してまとめた。