左手の写真家・井上さん、中学生に体験語る 上柚木中で道徳授業

左手の写真家・井上さん、中学生に体験語る 上柚木中で道徳授業
撮影した写真を見せながら語る井上さん=撮影:秦さわみ
【協賛企画】
広 告

 もしも、今日できていることが、明日にはできなくなったとしたら――。不慮の事故で右腕の機能を失いながらも、写真家として活躍する井上嘉代子さんを招いた道徳の授業が、東京都の八王子市立上柚木中学校(三田村裕校長、生徒266人)で1月20日に行われた。「ピンチをチャンスに変えるのは自分。でも、人の支えはなくてはならない」。井上さんの話に、生徒たちは自身が抱える困難を重ね合わせ、これからの生き方への考えを深めた。

 井上さんはデザイナーやカメラマンとして働いていたが、40代で交通事故に遭い、右腕の機能を失った。仕事や家事ができなくなりふさぎ込んでいたところ、就職した息子が初任給でカメラをプレゼントしてくれたことをきっかけに、写真家として再起。現在は山梨県に住み、大好きな自然に囲まれ、風景や野生生物、鉄道、花火などを撮影している。

 「今日できることが、明日もできるとは限らない」「ピンチが自分に襲い掛かった時、最初にできたことは笑顔だった」「失うものがあっても、得るものもたくさんある」――。20日、全学年の生徒は体育館に集まり、実体験をもとにした井上さんの講演を真剣に聞き入った。

 講演の後、井上さんは各教室を巡回して生徒たちの質問に答えた。「使っているカメラの種類は」「これまで見た中で一番、きれいだった景色は」「車の運転はどうしているのか」といった質問の他、「自分も持病があり、親に迷惑を掛けている」と打ち明ける生徒も。井上さんは「親が子どもを迷惑だと思うことは絶対にない。自分ができることをやっていこう」と励ました。

終了後、井上さんと同じく右腕に障害のある生徒が「どうしても話したい」と、友人と一緒にやってきた。「話に共感するところがあった。できないこともあるけれど、工夫すればできるようになることもある」。そう切り出した生徒に井上さんは「生活でもいろいろと困る場面があるが、それを実際に体験している私たちが発信をしていけば、共感したり助かったりする人がたくさんいるのではないかと思う」と笑顔で応じた。

広 告
広 告