10代向けEdTech・プログラム「Inspire High(インスパイア・ハイ)」で、元陸上選手の為末大さんを招き、「目標との向き合い方」について考えるオンライン公開収録イベントが、1月29日に開かれた。陸上選手を志し、自らの目標と向き合い始めた中学生時代の経験や、スランプに陥った時の心の持ちよう、さらに子供が失敗した時に教育者が掛けるべき言葉など、参加者からの幅広い質問に答えた。
「目標」というテーマについて、為末さんは「中学校の陸上部に入った頃から目標を立てるようになった」と語り、「中学校の先生は面白い人で、まず大切なのはモチベーション、次に体力、その上に技術があるのだと教わり、目標は自分で立てないと意味がないと言われた。『今年はここまで行きたい』と目標を立て、『そのためにどういう練習をすればよいか』を考えるクラブだった。目標を立てて計画に落とし込み、細分化するということをやっていた」と振り返った。
スランプの対処法を聞かれると「周りの友達はうまくなっているとか、自分も本当はもっとうまくなっていたはずなのに、というギャップに焦るので、先のことを考えたり、過去と比較したりするのをやめ、『まずは今日、グラウンドに行って、こんなことができたらよいな』ということを繰り返していくことがまず、とても大切だ」と話した。
合わせて「目標ができるとがんばることはできるが、達成できないとつらくなったり、自分はだめなのではないかと思ったりする。目標にはそういう『毒』の部分もある。スランプで苦しくなってきたら、最初にスポーツを始めた時のような、『楽しいからやっているのだ』という気持ちを大事にしていくのがよいと思う」とアドバイスした。
今回のイベントには10代の子供たちのほか、同プログラムを導入している学校の教員も参加。「生徒への声掛けで気を付けるべきことは何か」という質問が出た。為末さんは「(子供が)一生懸命やっていたり夢中でやっていたりする時には、そのままでよいと思う。でも、失敗したりうまくいかなかったりした時に、何と質問するかが大事だ」と応じた。
「昔は『なんで失敗するんだ』と言われたものだが、これには意味がない。一番悔しいのは本人だからだ。僕がよいと思うのは、『何を学んだのか』という質問だ。失敗して、次にどうしたらよいかと考えるところまで行ければ、一つの学びになる。一つ一つを学びにしてしまえば、失敗など世の中にはない。『それで何を学んだの?』と聞いてあげれば、『これは学びであり、失敗ではないのだ』と思えるようになる」と力を込めた。
肩書きを「元オリンピック陸上選手」から「元陸上選手」に修正しました。