虐待の疑いなどでこどもの生命や権利が脅かされていると児童相談所が判断した際に、措置方針が決まるまで生活する一時保護施設の設備や運営に関する基準案について、こども家庭庁はこのほど、パブリック・コメントの募集を始めた。これまで一時保護施設の設備や運営に関しては基準がなく、児童養護施設のものを準用してきたが、改正児童福祉法を踏まえて新たに策定された。基準案では、一時保護施設で過ごしている間も在籍していた学校などへの通学の支援に努めなければならないとされ、保護されたこどもが、一時保護施設にいながら在籍している学校に通える可能性が高まることになる。
基準案はパブリック・コメントを経て3月下旬に内閣府令として公布され、4月1日から施行される。これを基に都道府県は条例で、一時保護施設の設備や運営の基準を定めることになる。基準には、条例でも同じ規定を設けなければならない「従うべき基準」と、地域の実情に応じて異なる内容を定めることが許容される「参酌すべき基準」に大別されるが、こどもの権利や学習権の保障に関する複数の規定が「従うべき基準」とされた。
例えば、こどもの権利に関しては、施設においてこどもの意見や意向を尊重した支援を行わなければならないと明記。正当な理由なくこどもの権利を制限してはならないとし、正当な理由がありやむを得ず権利を制限する際は、その理由を十分に説明し、理解を得るよう努めること、施錠などによりこどもの行動を制限してはならないこと、合理的な理由なくこどもの所持品の持ち込みを禁止してはならないことなどを明記した。
また、こどもの学習権に関しては、学習指導員は小、中、高校のいずれかの教員免許を持っていること、こどもが適切な教育を受けられるように、本人の希望を尊重しつつ、置かれている環境などの事情を勘案して、在籍している学校への通学支援などの措置を講じるよう努めなければならないことなども「従うべき基準」とされた。特に在籍している学校への通学を巡っては、さまざまな理由からこれまで十分に保障されていなかった。「従うべき基準」とされたことで、改善が進むことが期待される。
基準案は2月14日まで、政府のパブリック・コメントサイトのe-Govで受け付けている。