強度行動障害の子どもの支援と指導 都教委検討委が報告書

強度行動障害の子どもの支援と指導 都教委検討委が報告書
iStock.com/Volha Kratkouskaya
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 自分自身や周囲の人を傷つけたり、物を壊したりする行動が頻繁にみられる状態である「強度行動障害」について、東京都教育委員会は2月9日、「強度行動障害のある児童・生徒への効果的な指導の在り方検討委員会」の報告書を公開した。不適切な行動を止めることばかりに注力せず、より社会的に許容される行動を推奨していくことを基本的な考え方に据え、学習指導などでの留意点をまとめている。

 「強度行動障害」は重度の知的障害や自閉症の子どもに生じやすいと言われており、コミュニケーションの苦手さや感覚過敏などの障害特性に、環境や周囲の支援がうまく合っていないために、強いストレスや不安を感じる状態が長く続くことで生じるとされる。生まれもった障害とは異なり、学齢期から発生する傾向にある。

 都教委が「強度行動障害」に特化して作成した教員向けの資料としてはこの報告書が初めてで、特別支援学校の教員や学識経験者、療育関係者らで構成される検討委員会で今年度、議論が進められてきた。

 報告書では、こうした行動が生じている背景には必ず理由があるとして、困った行動をする子どもではなく、やむを得ずそうした行動を取らざるを得ない子どもと捉えることを強調。不適切な行動を制止しようとするのは、その場から逃避するためにさらに周囲を困らせる行動を取るようになったり、制止しようとする行動が行き過ぎると体罰につながったりするため、まずは環境を整え、代替的なコミュニケーション手段を教えることや、社会的に受け入れられやすい行動を推奨していくことが必要だとした。その上で、学校教育における環境や関わりで最も影響力のある存在は学級担任だとし、信頼関係を築くのが大切だとした。

 この基本方針を踏まえ、学習指導において望ましい行動を増やすための声掛けや教材の工夫、代替行動の獲得に向けた指導、本人が苦手に感じている子どもとの関係づくりの支援、トイレや偏食といった生活面での留意点などについて、事例も交えて解説。強度行動障害を重篤化させないための未然防止や緊急時の対応、保護者や外部機関との連携のポイントなども紹介している。

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