授業時間5分短縮「論点の一つ」 学習指導要領改訂で文科相

授業時間5分短縮「論点の一つ」 学習指導要領改訂で文科相
衆議院予算委員会の分科会で答弁する盛山文科相=衆議院インターネット審議中継より
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 国会は2月27日、衆議院予算委員会の分科会を開き、このうち第4分科会で教育行政の最近の課題を中心に集中的な審議が行われた。小中学校の授業時間を5分短くし、短縮分を各校が自由に使えるようにする学校裁量の拡大について、盛山正仁文科相は次期学習指導要領の改訂に向けた「論点の一つになり得る」と答弁した。文部科学省の矢野和彦初等中等教育局長は、現行の学習指導要領に盛り込まれている情報活用能力の育成を巡り、プログラミング教育の取り組みや教材の整備などについて自治体間や学校間の格差解消が課題になっているとの認識を示した。給特法の改正については多くの議員が取り上げたが、盛山文科相は「給特法の在り方も含め、具体的に検討していくべき課題であると認識している」と述べるにとどめ、中教審特別部会の検討結果を待つ考えを繰り返した。

「教育活動を行いやすい環境を整えていく」

 小中学校の授業の1単位時間は学校教育法施行規則で小学校45分、中学校50分と定められているが、東京都目黒区は文科省の研究指定を受けて授業時間を5分短くして40分とする「40分授業午前5時間制」を特例として実施し、各学校の特色ある教育や教員自身のための時間の充実を図るといった取り組みを進めている。

 こうした5分の授業短縮について、盛山文科相は、まず「学校教育法施行規則で授業の1単位時間を定めているが、現行制度上でも実際の授業時間は各学校で柔軟に決めることができる。次期学習指導要領の改訂に向けて、授業の1単位時間の取り扱いについて、今の時点で何か方針を決めているという事実はない」と前置きをした。

 その上で「変化の激しい時代の中にあって、より一層学校や教師が学校における働き方改革を進めるとともに、目の前の子供たちの多様な実態に応じた教育活動を行いやすい環境を整えていくことが重要と考えている」と述べ、中教審が授業時数も含めた学校裁量の在り方を検討する必要を指摘していることに触れながら、「授業時間も含めた教育課程の在り方についても、今後の論点の一つになりうる」と答弁した。井坂信彦議員(立憲)の質問に答えた。次期学習指導要領の改訂作業は、年内にも大臣諮問によってスタートするとみられている。

情報活用能力の育成 自治体間や学校間の格差解消が課題

 情報教育について文科省の課題認識を問われた矢野初等中等教育局長は、自治体間や学校間に格差があることを説明し、「情報モラル教育を含め、現行の学習指導要領の着実な実施による情報活用能力の確実な育成を目指し、格差の解消に取り組んでいきたい」と述べた。

 具体的な自治体間や学校間の格差については、小学校では「自治体間、学校間でプログラミング教育の取り組みに差が出ている。キーボードによる文字入力が十分にできていない児童が一定数みられる」、中学校では「プログラミングに必要な教材が十分に整備されていない自治体がある」、中学校と高校では「(教員に)技術や情報の免許保有者の割合が少ない県がある」とそれぞれ指摘。さらに小中高に共通する課題として「フェイクニュースなども広がる中、メディアリテラシーの育成に関わる取り組みに差が見られる」との認識を示した。鈴木英敬議員(自民)の質問に答えた。

35人学級の効果検証 実証研究の進展状況を今年度末に公表

 小学校の35人学級が年次進行で段階的に進められる中、義務標準法の改正時に附則で求められた少人数学級の効果検証について、実証研究の内容や進展状況を巡る質疑も行われた。小学校35人学級の効果検証は、35人学級を中学校に適用したり、小学校の学級編制標準のさらなる引き下げを検討したりするための前提になるとみられている。

 盛山文科相は効果検証を行う期間について「2022年度から小学校35人学級の学年進行が完成する25年度まで、実証研究を実施することを予定している」と説明。23年度末ごろに実証研究の調査の進展状況を公表するとともに、25年度末ごろに分析結果の取りまとめを行う、とのスケジュールを明らかにした。

 実証研究の具体的な内容については「少人数学級の効果と、外部人材活用の効果のそれぞれについて、児童生徒の学力のみならず、社会情動的スキルなどに与える効果を多角的に検証するとともに、教師の指導方法や精神的健康への影響などについても検証する」と説明した。

 また、現時点での進展状況については「一部の地方公共団体を対象として、それぞれの変化を把握するため、22年度と23年度に児童生徒、教師および保護者に対する質問紙調査を実施し、現在集計作業中。来年度も引き続きこの調査を実施する予定」と述べた。道下大樹議員(立憲)の質問に答えた。

給特法の見直し「具体的に検討していくべき課題」

 教員の働き方改革や負担軽減、給特法改正など教員の処遇改善については、中教審特別部会で現在議論していることを理由に、これまでと同じ答弁を繰り返した。

 給特法は教員の「職務と勤務態様の特殊性」を理由に、教員に残業代を支払わず、代わりに給料月額の4%を支給するという仕組みを定めている。この「特殊性」をどう認識しているかとの質問に対し、盛山文科相は「子供の人格の完成を目指す教育を職務とする教師は、極めて複雑困難で高度な問題を取り扱い、専門的な知識技能を必要とされ、また、そのために絶えず研究と修養に努めることが求められるなど、個々の教師の判断・責任に委ねられている側面があり、どこまでが職務であるのか切り分け難いという職務の特殊性のことを指すものとわれわれは認識している」と説明した。堀場幸子議員(維教)の質問に答えた。

 給特法の廃止や抜本的見直しを求める質問に対して、盛山文科相は「教師の自主性自発性が強調されるあまり、勤務時間を管理するという意識が希薄化し、在校等時間が長時間化しているとの指摘もあり、19年の給特法改正に基づき、教師の在校等時間の上限等を定める指針を策定するなど、時間外在校等時間の長時間化を防ぐための取り組みを進めている。給特法についてはその在り方も含め、具体的に検討していくべき課題であると認識している」と、見直しが必要になっているとの認識を示した。その上で、「現在、中教審において総合的に検討いただいている。引き続き、教育の質の向上に向けて、学校における働き方改革、教師の処遇改善、学校の指導運営体制の充実、教師の育成支援を一体的に進めていきたいと考えている」と、従来の見解を繰り返した。道下議員の質問に答えた。

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