今年度が終わる。年度末は大変な学校も多かったのではないだろうか。私が訪問した学校の2校に1校は教員が不足していた。今年度は産休・育休の代わりが見つからず、そのまま一人少ない状態で回していたという学校も多かった。学校現場を支えてきた皆さんには、最大限の敬意を払いたい。
そんな中、短い春休みがあって、すぐに新年度が始まる。やらなければいけないことはたくさんあるかもしれないが、指導要録などの作業を早めに済ませ、とにかく休んでリフレッシュしてほしいと切に願う。
休みながらも、ぜひ考えてほしいことがある。それは、来年度の学校のルールづくりである。
文部科学省の「全国の学校における働き方改革事例集」は読んだだろうか。全国の学校の好事例がたくさん載っている。読んで、できそうなことから始められる準備をしてほしい。
ただ、学校のルールを変えるのは決して簡単なことではない。自分が良いと思っている考えを、どれだけ校内の教員たちに広められるかが鍵になる。
あなたは、校内に考えの近しい人が何人いるだろうか。その人たちに、自分の考えを伝えているだろうか。
どんなに良い考えでも、一人では進まない。ただ、仲間が3人できると、どんどん進みだす。まずは3人、仲間を作ることをお勧めする。
次は、校内のキーマンに伝えることである。誰がキーマンだと思うだろうか。キーマンは管理職や主幹とは限らない。声が大きい人とも限らない。
この人が言えば、みんなついてくるという人は、陰ながら職場で貢献している人だ。その人と仲良くしながら、自分の考えをしっかり伝えるといい。
ルールを変える中で、ぜひ新年度初めにしてほしいことがある。ランドセルやかばんで児童生徒が毎日持ち帰るものを減らすことである。
わが家には中学3年生と小学4年生になる子どもがいるが、どちらのかばんもここまで重いのかと思うくらい重い。コロナ禍でタブレットを持ち帰るのが当たり前になったため、ランドセルやかばんの重さはかなり増えた。教科書などを置いて帰る文化はできてきたが、それでもとても重い。
心理学の研究でも、毎日重い物を持たせた人は、毎日軽い物を持たせた人より幸せを感じる力が低くなるという研究がある。荷物が重いことが、学校嫌いになっているのであれば、すぐさま軽くするべきである。
そのためにも、授業のデジタル化は急務である。本当に教科ごとにノートが必要なのだろうか。ほとんどをデジタルツールに記入して振り返りノートは1冊にまとめる。そうすることで毎日ノートを5冊持ち歩いていたものが1冊で済む。
漢字ドリル・計算ドリルも毎日宿題にするべきなのか、そこまでたくさんやらなければいけないのかということも検討すべきだ。
子どもたちは大人になればパソコンを使って仕事をすることになる。そんな中、必要以上に漢字を書いて定着させる必要があるのかどうかも疑っていただきたい。
決して努力・忍耐・根性・我慢が必要ないとは思わない。しかし、これからの時代を生きる力につながらないものや、つながりが弱くなるものはどんどんなくしていくべきである。そうしないと、学校教育はいつまでたっても変わらない。
ルールを変える中で、もう一つ考えておくことがある。それは、年度途中で教員が少なくなった時にどうすべきかを決めておくことだ。
全員無事で来年度1年間を過ごせることを切に願うが、多くの学校で一時的には人数減の状態になるだろう。産休に入った後、年度途中で産休の代替教員を見つけることはかなり難しい。「見つかったらラッキー」というくらいに考えて、人数減になっても持続可能な学校運営にしておくべきだ。また、職員のインフルエンザや家族の病気もある。いつでも休みやすい状況はつくるべきである。
それには、最初の校務分掌の割り振りが大事になる。最初から仕事を均等に分けてはいけない。何かあった時に校務分掌が少なくて、実力のある教員がフォローに入れるように校務分掌を重くし過ぎないようにすべきだ。その教員を誰にするかは、新年度の初めに決めておくべきだろう。
インフルエンザ、育休、病休、自分の子どもの発熱、介護…。何かあった時に安心して休める職場にしなければならない。お互いさまだからこそだ。そして休んだ教員が出勤している時に、職員みんなのために休んでいる人の分まで頑張りたいと思える環境を作っていく必要がある。
私は、来年度がとても大事だと思っている。東京都の小学校教員の採用倍率は1.1倍となった。明らかに臨時的任用教員が足りない。当然、これは東京都だけではない。全国の教員不足は少なくても数年間続く。
毎日毎日、代替教員を探すために電話し続けている管理職や教育委員会の担当者をたくさん知っている。そのような仕事を減らし、少しでも学校現場をより良くするために時間を使ってほしい。管理職の笑顔が、学校環境をよりよくすることにつながるからだ。
私は来年度も現場の先生や教育委員会に寄り添える活動をしていく。とにかく現地に出向き、話を聞き、それを伝えていく。解決できる好事例を広め、持続可能な教育現場をつくっていくために発信していきたいと考える。