不登校要因で教員と当事者に認識差 問題行動調査を改善

不登校要因で教員と当事者に認識差 問題行動調査を改善
iStock.com/gyro
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 不登校になったきっかけについて、教員と児童生徒・保護者では認識に差があることが3月25日、子どもの発達科学研究所が行った文部科学省の委託調査で分かった。文科省の2022年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」(問題行動調査)では、不登校の主たる要因が「無気力・不安」であるとされていたが、委託調査の結果を受けて文科省では、23年度の問題行動調査で不登校の要因に関する質問項目を見直すなどの改善策を打ち出した。

 委託調査は昨年7~8月に、大阪府吹田市、広島県府中市、宮崎県延岡市、山梨県の各教育委員会の協力を得て、22年度に小学3年生から高校1年生(中学3年生を除く)だった児童生徒1万9005人とその保護者1万2140人、当時の担任教員ら(児童生徒2万4935人分)を対象に実施。不登校児童生徒について、教員、本人、保護者の各回答を比較し、不登校の関連要因を探った。

不登校のきっかけ・要因に関する教員・児童生徒・保護者の回答の比較(特徴的な項目を一部抜粋)
不登校のきっかけ・要因に関する教員・児童生徒・保護者の回答の比較(特徴的な項目を一部抜粋)

 そのうち、教員が22年度に不登校として報告し、かつ児童生徒も年間欠席30日以上と回答した239人と、保護者も年間欠席30日以上と回答した200人について、不登校になったきっかけを比較すると、「学業の不振」や「宿題の提出」はおおむね3者の回答が近い値だったが、「いじめ被害」「教職員への反抗・反発」「教職員からの叱責」については、教員の回答に比べて児童生徒・保護者の回答割合の方が高かった。さらに「体調不良」「不安・抑うつ」「居眠り、朝起きられない、夜眠れない」といった心身や生活リズムの不調に関するものも、児童生徒や保護者は7~8割が回答している一方、教員の回答割合は2割弱と低かった(=表)。

 また、教員の回答を分析すると、不登校の象徴的なきっかけや要因がない場合に「無気力・不安」と回答しやすい可能性も示唆された。

 調査結果を踏まえ、文科省は3月26日、23年度の問題行動調査から不登校の要因に関する調査項目・方法について、不登校のきっかけや背景にある事実に基づいて回答することや、主な要因を一つ答える形式から、複数回答形式に変更すること、回答の際に本人や保護者、スクールカウンセラーなどに確認を推奨するなどの見直しを行い、教育委員会に向けて新たな調査票を発出した。不登校の要因について教員と児童生徒などとの認識の差を確認するため、今後も定期的に児童生徒本人へのアンケートを実施していくという。

 同日の閣議後の記者会見で盛山正仁文科相は「こうした取り組みを進めることで、不登校の要因の正確な把握、有効な対策の推進に努めたい」と強調した。

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