障害のある受験生とCBT アクセシビリティーはどう確保?

障害のある受験生とCBT アクセシビリティーはどう確保?
障害のある子どもに合わせたICT機器の環境整備のポイントを解説する山口講師=オンラインで取材
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 CBT(コンピューター使用型調査、Computer Based Testing)を用いた試験での、障害のある受験者への配慮について研究している大学入試センターの南谷(みなたに)和範教授の研究室は3月26日、「今ここにあるCBTと障害のある児童生徒への配慮」と題したシンポジウムをオンラインで開いた。近年のICT機器の学校現場への普及によって、障害のある児童生徒にどのような形でアクセシビリティーが保障されているかを踏まえつつ、大学入試などでCBTを用いた場合に、障害のある受験生にどのような配慮が考えられるかを検討した。

 南谷教授らのグループは2021年度から「多様な受験者の高度テスト配慮を実現したCBT環境の開発と教育テスト実施改善の研究」に取り組んでいる。その一環で開かれた今回のシンポジウムでは、GIGAスクール構想で導入された端末やICT機器を障害のある児童生徒に最適な環境に調整する支援をしている新潟大学の山口俊光特任講師と、音声読み上げ機能のあるデジタル化された「デイジー教科書」の技術開発などに関わった村田真慶應義塾大学特任教授が講演した。

 山口講師は、自身がこれまで関わってきた障害のある児童生徒に合わせたICT環境を考える際には、端末のOSに標準で搭載されている文字サイズの変更や音声読み上げなどのアクセシビリティー機能を最大限活用することをポイントに挙げた。その上でCBTに関しては「CBTを実現するアプリケーションを作る際に、独自のアクセシビリティー機能を持たせることが考えられる。子どもたちは普段からOS標準のアクセシビリティー機能を使っていることがとても多い。それと新たに開発したCBTのアクセシビリティー機能が競合してしまうことに配慮してもらえたら、より良いものができるのではないか」と指摘した。

 普及が進むデイジー教科書の機能や障害のある児童生徒へのアクセシビリティーの確保に関する技術を紹介した村田特任教授は、CBTに求められるアクセシビリティーとして「デイジー教科書相当の機能は当然必要だ。ただし、デイジー教科書は視覚障害者にとって扱いにくい部分もあり、その意味では視覚障害者にとってもっと使いやすい音声読み上げ機能がCBTには求められる。日本語組版でも、縦書き対応やルビの色、大きさを変えるといったことは当たり前にやってほしい」と注文。ユーザーごとに読みやすい文字の大きさや音声読み上げの速度などをあらかじめ設定し、テストが始まるとCBTのシステム上でカスタマイズできるようにするなどの仕組みを整備することを提案した。

 南谷教授は文部科学省が3月に公表した障害のある学生の修学支援に関する検討会の「第三次まとめ」や、日本英語検定協会が導入した「英検S-CBT」における障害のある受験者への配慮を例に、現状の技術でCBTを行った場合に、障害のある受験者にどのようなアクセシビリティーの保障が考えられるかを解説。「主催者側が準備した特定のソフトウェアがどんな障害のある受験者に対しても必ず使えるものであると安易に仮定してはならない現実がある。障害のある受験者に対応する現実解として期待が持てるものは、(歴史的にも)障害特性を考慮した操作性がしっかり整備されているウェブブラウザを活用して受験するシステムが有望ではないか」と述べた。

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