虐待や性暴力の被害を受けた子どもの権利擁護や心身のケアの支援に取り組む認定NPO法人子ども支援センターつなっぐは3月28日、全国の児童相談所や弁護士会に行った子どもの性被害への対応に関する実態調査の報告書を公表した。子どもが性被害を最初に開示した場所は学校が最も多かった。報告書では、学校が被害に遭った子どもから必要以上に聴取をすることで起きる「記憶の汚染」を防ぐ対策が必要だと指摘している。
実態調査は2022年10月から12月にかけて、都道府県・政令市の児童相談所、弁護士会に子どもの性被害のケースと対応を聞いたアンケートを送付。138件の有効回答を得た。被害に遭った子どもは女子が128人、男子が7人、不明が4人だった。
被害が複数回あったケースで、被害開始時と被害終了時を年齢層別でみると、不明なケースを除いて最も高かったのは、開始時では10~12歳の28.1%、終了時では13~15歳の29.2%だった。加害者の属性は実父が59件、養父・継父が34件で、これらで全体の約7割を占めていた。
子どもが自身の性被害を最初に開示した場所についてみると、学校が39件と最も多くなるなど、子どもが1日のうちで多くの時間を過ごす場所で被害を開示する傾向にあった。
報告書では、学校現場では被害について初期聴取を繰り返した結果、実際には起きていない出来事を事実だと思い込んでしまったり、聴取の際に与えられた情報によって記憶が変わってしまったりする「記憶の汚染」が起き得ることへの認識が不十分であると指摘。学校での聴取でも「記憶の汚染」がないように意識しなければ、後に子どもが被害を訴えても、裁判所から「信用できない」と判断されてしまう可能性があることから、文部科学省などに対して、これらの対応を学校現場に周知するよう提言している。
こうした初期聴取の方法について、「つなっぐ」では報告書と合わせて作成した「日本版司法面接ガイドライン」の中で解説しており、▽初期聴取は子どもの安全確保、即座の医学的診断・治療、刑事事件としての立件の必要性などについて判断するために必要な最低限の情報を収集するために行われるものであり、その限度を超えてはならない▽可能な限り少ない回数に抑える必要がある▽可能であれば録音し、そうでない場合も報告書やメモで文書に残すなどして記録することが望ましい――などに留意するよう求めている。