生活保護世帯や住民税非課税世帯など、経済的に困窮している家庭の小学生の2割、中学生の3割程度が、学校を楽しくないと感じていることが4月2日、子どもの貧困問題に取り組む「あすのば」が行った全国的な調査で明らかとなった。学校の授業の理解度も低く、特に中学生では学校の授業が分かると答えた割合は2割を下回るなど、家庭の経済的な貧困が教育格差をもたらしていることが改めて浮かび上がった。
調査は昨年11月9日から12月4日にかけて、生活保護世帯、住民税非課税世帯、住民税非課税相当の世帯など、「あすのば」が実施する「入学・新生活応援給付金」をはじめとする事業を受給した1万4845世帯の保護者、子ども・若者にアンケートを依頼。保護者は4012件、子ども・若者は1862件の有効回答を得た。
保護者の回答をみると、新型コロナウイルスまん延の影響で過半数の53.0%が「失業・休業・転職などで世帯の収入が減った」と回答。物価・光熱費の高騰の影響で85.4%が「家計がさらに苦しくなった」と答えていた。コロナの影響で「子どもが不登校や学校を休むことが増えた」という回答も26.0%を占め、コロナ禍以降、生活だけではないさまざまな面で困窮家庭がダメージを受けていることを裏付けた。
子ども・若者への調査でも、「学校に行く気がしない」という質問に「よくある、ときどきある」と答えた割合は38.7%、「孤独を感じることがある」では34.6%と、貧困は子どもの精神状態にも悪影響を及ぼしていた。特に、非就労の若者は健康・精神状態が深刻な状況に置かれていた。
さらに、学校が「あまり」または「ぜんぜん」楽しくないという回答が小学生で22.8%、中学生で29.4%、高校生で22.1%に上り、学校の授業の理解度が「いつも」または「だいたいわかる」と答えた割合は小学生で37.4%、中学生で16.1%、高校生が35.3%と中学生で特に低かった(=グラフ)。困っている事や悩み事があるとき、相談できると思う人として教員を挙げたのは小学生で23.6%、中学生で14.5%、高校生で13.6%と、内閣府が2021年に行った「子供の生活状況調査」と比較しても低水準だった。
「あすのば」の理事で、調査の検討委員会委員を務めた末冨芳日本大学教授は、東京都千代田区の衆院第一議員会館で開かれた調査の報告会で、「この調査を改めて出して、厳しい状態の子ども・若者や家族がこれだけいるという実態と向き合わなくてはならない。一刻も早くお腹を空かせた子ども・若者をゼロにする。それは全ての子ども・若者や家族が前向きに生きることの基盤だ」と、子どもの貧困対策の強化を呼び掛けた。