奈良国立大学機構奈良教育大学は4月9日、同学附属小学校で2023年度に小学4年生だった男子児童が前年度からいじめを受け、転校を余儀なくされたなどのいじめ重大事態が発生していた問題で、いじめ防止対策推進法に基づく調査委員会の報告書を公表した。いじめは同級生らによって小学3年生の頃から起きていたが、同小ではいじめの早期発見や対処についての行動計画が適切に示されておらず、学校としての組織的な対応が始まるまでに1年間を要したと指摘。同学では附属学校園に対して、いじめ防止対策の常設組織を適切に機能させることや、いじめ対応の行動計画を早急に策定することを指示した。
調査報告書によると、23年8月に被害に遭った児童の保護者が転校希望先の奈良市内の小学校にかけた電話でいじめ被害について伝え、転校先の小学校の校長が同小の校長に連絡して発覚。報告を受けた奈良教育大学はいじめ防止対策推進法に基づき調査委員会を設置し、関係者などからヒアリングを行った。
その結果、遊びの場面での仲間外れや悪口、物を隠すなどの行為のほか、複数の児童から踏みつけられるなどの暴力を受けていたり、女子トイレに無理やり入れたりしていた事実などをいじめと認定した。
同小の組織的ないじめ防止対策は、特別な支援が必要な子どもへの対応なども検討する「SNE委員会」が担うことになっていたが、学校いじめ防止基本方針には、SNE委員会におけるいじめについての具体的な対策内容が示されておらず、いじめの可能性がある場合に組織的にどのように対応するかが明確にされていなかった。また、いじめの可能性があったときにSNE委員会に報告するかどうかは担任や学年団の教員の判断に委ねられていたため、今回のいじめについても担任や学年団、主幹教諭が対応していたものの、SNE委員会には上げられていなかった。そのため、調査報告書では、今回のいじめについて学校として組織的に対応するまでに1年間を要したと指摘。転校が判明するよりも前に重大事態として対処することを検討すべきだったと批判した。
これを受けて奈良教育大学では、同小に対していじめに対処する行動計画を作成するワーキンググループを設置すること、他の附属学校園についても、今年度のいじめ防止基本方針を速やかに策定し、いじめ防止のための常設組織を適切に機能させること、いじめ防止のための教育やSOSの出し方教育、教員への研修などを含めた行動計画を策定・実施し、定期的に進捗(しんちょく)状況を報告するよう求めた。