4月19日に中教審初等中等教育分科会の「質の高い教師の確保特別部会」で、給特法の教職調整額引き上げなどを盛り込んだ審議まとめの素案が示された約2時間前、現職の教員や研究者らによる「給特法のこれからを考える有志の会」は文部科学省内で記者会見を開き、素案の方向性では教員の長時間労働の削減につながらないと批判した。同会賛同人の中原淳立教大学教授は教職調整額の増額について「手段と目的が整合的ではない」と指摘した。
2019年9月に発足した同会では、給特法の廃止を含めた抜本的な改善を求めたオンライン署名などを展開し、23年3月には8万3000筆を超える署名を文科省に提出している。同会メンバーで岐阜県立高校教諭の西村祐二さんは「これまでずっと、『教職調整額の増額は最悪の結末だ』と述べてきた。調整額の増額では結局、定額働かせ放題と言われてきた問題が解決しない。4%定額働かせ放題が10%定額働かせ放題になるだけで、残業削減のループに入っていかない」と危惧。給特法の下では管理職による教員の勤務時間管理の責任があいまいで、長時間労働に歯止めをかけられないとし、給特法を廃止して労働基準法を適用すべきだと訴えた。
また、中教審の議論において現職の教員や教員志望の学生の意見を聞く場を設けたり、給特法を廃止したりしないのであれば、管理職の責任を明確にする条文を加えるべきだと提案した。
記者会見に出席した中原教授は、特別部会の議論は、長時間労働を含めた教員の働き方の見直しや労働環境の改善を通した人手不足の解消という本来の目的を見失っており、「教職調整額が増える今回の施策だけをもって(長時間労働を)抑止することは期待できない」と批判。「手段と目的が整合的ではない。一貫していない」と疑問を投げ掛けた。
その上で中原教授は、長時間労働の是正には、①時間外労働に対するコストを組織が支払うこと②労働時間を管理する責務を管理職が持つこと③①と②が機能していることを監視する機関の存在――の抑止力が必要だが、これらが存在しないか、かなりの部分が機能していないのが現在の学校だとし、このまま長時間労働が続き、教員不足が深刻な状態が続けば、公教育のサービスレベルの切り崩しにつながると警鐘を鳴らした。