教育行政のあるべき姿を議論 教育政策リーダーフォーラム開催

教育行政のあるべき姿を議論 教育政策リーダーフォーラム開催
記念シンポジウムでこれからの教育行政について語り合う登壇者ら=メタバースで取材
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 これからの教育改革に求められる教育行政のあるべき姿について議論する「教育政策リーダーフォーラム」が4月21日、メタバース上で開催された。日本最大級の教育政策リーダーのネットワークを目指して立ち上がった(一社)「LEAP」のキックオフイベントとして行われ、教育改革で注目される神奈川県鎌倉市教育委員会の高橋洋平教育長や青森県の宮下宗一郎知事、大阪府教育委員会の水野達朗教育長らが登壇した。

 LEAP理事・事務局長でもある高橋教育長は、立ち上げた背景について「変化の激しい時代において、教育政策が果たす役割は高まっている。また、首長と教育長候補者のマッチングにも課題がある」などと話した。今後、LEAPでは各自治体の現職教育長や教育政策の人材育成をリードする東京大学・兵庫教育大学などと連携して、首長や教育委員会の課題に応じた組織や人材のコンサルティング、ネットワークの構築などを行っていく。

 「これからの教育改革に求められる教育行政とは?」をテーマとした記念シンポジウムには、兵庫教育大学の加治佐哲也学長や青森県の宮下知事らが登壇。兵庫教育大学では、現職教育長や将来の教育長候補などを養成する「教育政策リーダーコース」、教育行政職幹部職員を対象とする研修「教育行政トップリーダーセミナー」を実施し、教育行政のトップリーダーに対するマネジメントやリーダーシップの支援を行ってきた。加治佐学長は「特に変革型の教育長が少ないというデータから、こうした取り組みを実施してきた」と話し、「教育政策リーダーコース」からは、この春にも新たに4人が教育長に就任するなど、多くの教育長を生み出してきたことを紹介した。

 宮下知事は知事直轄の組織として誕生した「青森県教育改革有識者会議」について、「この会議には、全国の教育界で活躍する実践者に有識者として参加してもらっている。自分自身の教育観もアップデートしながら、学校現場に生かしてもらえるよう取り組んでいる」と説明。また、首長の役割について「学校だけでは解決できない課題を伴走しながら解決していくのが、首長の使命だと思っている。学校現場の最大の応援団としてのリーダーシップを発揮したい」と語った。

 続いて行われた「外部人材の採用・活用によって活性化する教育行政」をテーマとした分科会には、前さいたま市教育長の細田眞由美氏や水野教育長、東京都利島村教育委員会の弟子丸知樹教育長らが登壇した。

 細田氏は教育長時代のデジタル関連の外部人材活用について振り返り、「さいたま市は児童生徒数が10万人を超え、教職員数も約6300人という大きな自治体だ。GIGAスクール構想を実現しようにも、教育現場にはIT人材がおらず、自前主義の限界を感じた」と話した。そこで、民間転職サイトを活用してITスペシャリストの公募を実施したところ、4人の募集に対し、600人を超える応募があったという。

 外部人材の採用・活用について「DX人材が関わることで教委にICTスキルやノウハウが蓄積された。また、教育のプロとITのプロとのコラボレーションで、教育現場に化学反応を起こすことができた。教委や学校ができることの限界を知り、自前主義をやめることで、子どもと教師の笑顔につながる」と強調した。

 また、民間団体から大阪府大東市教育委員会教育長になり、この4月からは大阪府教育委員会の教育長に就任した水野教育長は「私のような外部人材に求められるのは、小さな改革よりも大きな改革だ。ただ、民間経営の成功体験を自治体の改革にそのまま生かせると思ったら、失敗する。そのままやろうとしないことが大切だ」と話し、「アンラーンしながら、大阪府でも改革に取り組んでいきたい」と述べた。

 現在、全国で初めて民間の転職サイトを活用して次期教育長の公募を行っている弟子丸教育長は、公募状況について「島に移住するというハードルがあるため心配だったが、多くの反響をいただいている。しっかり選考プロセスを進めていきたい」と報告。こうしたチャレンジについて「全国の多くの自治体が同じようなことで悩んだり、つまずいたりしている。デジタルを活用し、どこかで解決されていることの知見とノウハウを共有できる仕組みづくりをしていきたい」と話した。

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