中学生にとって「学校とのつながり」が強いと、いじめの加害経験がない傾向にあることが、国立教育政策研究所が4月23日に発表した「生徒指導上の諸課題に対する実効的な学校の指導体制の構築に関する総合的調査研究」の最終報告書で分かった。調査では、学校への所属意識や愛着としての「学校とのつながり」の意識がどのように育まれるかも分析。生徒が教師に対して温かみや思いやりを実感し、教師が自分を守ってくれる存在であると認識することで学級の雰囲気が改善され、自己有用感や社会的態度・行動に肯定的な影響を及ぼし、「学校とのつながり」の意識が育まれていることが浮かび上がった。
調査は2市の中学校計40校に、2020年度と21年度の7月と12月の計4回、生徒、教員などに質問紙調査を実施。学校が好きであるかや、学校にいると安心して過ごせるかなど、生徒の学校への愛着や所属意識である「学校とのつながり」に着目し、生徒の「学校とのつながり」の育成に関わる要因や、生徒指導上の課題の未然防止との関連を分析した。
「学校とのつながり」に関連する要因では、生徒調査の結果から、生徒が教師に対して温かみや思いやりを実感し、教師が自分を守ってくれる存在であると認識することで、学級の雰囲気が改善され、学級環境が良好なものとなっていることが分かった。学級環境が改善されることによって、自己有用感をはじめ、役割に対する責任感や他者の尊重といった「社会的態度・行動」に肯定的な影響を与え、結果的に生徒が「学校とのつながり」の意識を育むことにつながっていることが示された。
また、生徒の「学校とのつながり」が強いほど、「仲間外れ・無視・陰口」や「からかい・冷やかし・悪口」「軽くぶつかる・たたく・蹴る」「お金、物を取り上げる」「窃盗・所有物の損壊など」「嫌なこと・恥ずかしいこと・侮辱」「ネット加害」といったいじめの8つの行為形態全てで、生徒はこれらのいじめの加害経験がない傾向にあった。
一方で、「学校とのつながり」は、時間の経過によってより強まる学校もあれば、希薄化してしまう学校もあった。
教員調査の分析からは、教員による生徒への支援の充実感は、生徒に関する「情報共有」と、学校の課題や方針などに対する教職員間の「共通理解」の改善が影響を与えていた。この「情報共有」と「共通理解」には同僚や管理職、生徒、保護者との人間関係が影響しており、その関係性を良好にすることの一つには、教職員間の「学び合い」の取り組みの充実や工夫があることも裏付けられた。