自殺に追い込まれた児童生徒の遺族たちによる「安全な生徒指導を考える会」が4月24日、東京・霞が関の中央合同庁舎を訪れ、積極的な対策を求めて加藤鮎子こども政策担当相に要望書を手渡した。要望書は「教員の不適切な指導による自殺は積極的に調査されない場合が多く、それでは再発防止策につながらない。具体的な対策につながる実態調査が必要」として、こども家庭庁が主体的に対策を進めることや、モデル事業であるCDR(予防のための子どもの死亡検証)の拡大、政策立案にあたって子どもの自殺対策を議論するメンバーに遺族を加え、亡くなった子どもの声なき声を生かす取り組みを進めることなどを求めている。
要望書を提出した「安全な生徒指導を考える会」は、部活動での厳しい指導や暴言など教員の不適切な指導が原因で命を落としたとみられる児童生徒の遺族が交流する中で2021年に結成され、文部科学省など関係機関への要望を続けてきた。こども家庭庁にも発足した23年に要望書を提出しており、同庁への要望書は今回が2回目。
要望書提出後、取材に応じた同会によると、要望書を受けた加藤担当相は「子どもが亡くなってしまう事案が起きる以前に、不適切指導は子どもに対する権利侵害なので、そのようなことが起こっていること自体、まずなくすようにしていきたい」と応じたという。
同会は「児童生徒の自殺が2年続けて500人を超えている。不適切指導が自殺の原因となることが、22年の生徒指導提要改訂でようやく認められた。同じような自殺者を繰り返し出さないためにも、こども家庭庁に具体的な対策をとってもらいたい」としている。同会に参加する遺族からは「息子の十三回忌を迎え、やっと前に進んできたと感じている。時代が変わってきて、やっとここまで来たという思いがある」との声が上がった。
また同会は、複数の関係機関や専門家が連携して子どもの死亡例を検証し、予防策を提言するCDRを早急に全国展開できるよう法制度の整備などを求めている。このほか、原因不明とされるケースが多い子どもの自殺のデータの質を高めて分析することが必要とし、不適切な指導の防止のための啓発活動、いじめ調査アドバイザーの対象拡大などの対策を要望している。