学校安全の校内体制や地域連携議論へ 文科省がWG設置

学校安全の校内体制や地域連携議論へ 文科省がWG設置
地域連携などについて話す「学校安全の推進に関する有識者会議」の委員ら=オンラインで取材
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 安全な学校環境の整備に向けた方策などを検討する文部科学省の有識者会議(座長・渡邉正樹東京学芸大学名誉教授)が5月2日、オンラインで開かれた。今年度は学校安全を推進する校内体制とともに、コミュニティ・スクールなど地域との連携も含めた組織体制の在り方を検討するため、有識者会議の下にWG(ワーキンググループ)を設置して集中的に議論することになった。

 同会議は、「第3次学校安全の推進に関する計画」(2022~26年度)の具体的な方策づくりを進めるために設置された。同日、今年度の初会合が開かれ、はじめに望月禎総合教育政策局長が「最近は組織的に学校安全に取り組むSPS(セーフティプロモーションスクール)も増えてきている。そうした学校の取り組みも参考にしながら学校安全を推進する校内組織や地域、家庭とのさらなる連携の観点も含めた組織体制の在り方を検討したい」と述べた。

 これを受けて、有識者会議の下にWGを設置することが決まり、同省担当者がWGの具体的な検討事項について、▽地域と連携したコミュニティ・スクールなどを生かした組織的な学校安全の推進▽学校の安全確保の実効性を高める校内体制の推進▽学校安全を推進するための研修の在り方--の3つを挙げた。

 続いて、各委員から意見が述べられた。桜井愛子委員(神戸大学大学院教授)は、コミュニティ・スクールを地域防災に生かしている横浜市の北綱島小学校の事例を紹介。保護者も含めた地域住民が主体的に防災訓練に参加している状況を報告し、学校安全を進める上でコミュニティ・スクールの仕組みは有効であると述べた。一方で、この仕組みだけでは不十分であり、児童生徒や保護者、教員も含めて幅広い世代が参加して防災に関わる体験や蓄積が必要だと強調した。

 平塚真一郎委員(宮城県石巻市立青葉中学校校長)は、東日本大震災の経験を経て防災意識の高い地域にあってSPS認証とコミュニティ・スクールの両方を導入した経緯を述べ、「教員が異動しても持続可能な仕組みは大事だと思う」と述べた。その上で、地域と一体となった活動をきめ細かく展開していることを紹介し、「学校だけで考えると職員の負担も大きくなるが、住民や生徒にも安全の当事者として取り組んでもらうことで軽減にもつながり、こうした仕組みが役立っていると思う」と述べた。

 小川和久委員(東北工業大学総合教育センター教授)は「少子高齢化が進む中で時間軸を考慮することも必要だ。うまくいっている学校も統合されることもあり、10年後、20年後も見据えた持続可能な方策を考える必要がある。高齢化が進む中で、興味関心を持ってくれる現役世代の地域人材と連携しながらコミュニティ・スクールを推進することも大切だ」と問題提起した。

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