文部科学省が公表した「英語教育実施状況調査」の結果で、中高生の英語力に自治体間の差が大きく見られたことについて、盛山正仁文科相は5月10日の閣議後会見で、「地域差を放置するつもりはない。課題が見られる自治体への個別のデータ分析や助言の実施など、スピード感を持って進めたい」と述べ、地域差の解消に向けて取り組む姿勢を示した。
同省が9日に公表した2023年度「英語教育実施状況調査」の結果によると、外国語習得の国際的な指標であるCEFR(セファール)のA1レベル(英検3級相当)か、それ以上の英語力を持っている中学3年生は50.0%、A2レベル(英検準2級相当)か、それ以上の英語力を持っている高校3年生は50.6%となり、いずれも13年度の調査開始以来、最も高くなった。一方で、中学生・高校生ともに、英語力は都道府県・政令市で差が大きいことも明らかになった。
盛山文科相は、中高生ともに目標値としてきた50%を達成したことについて、「大変ありがたい。生徒や教師の英語力は着実に向上しており、教育委員会や現場の先生方、子どもたちの努力に敬意を表したい」と評価した。
一方、地域差が改めて浮き彫りとなったことについては、「これを放置するつもりはない」と述べた上で、「調査結果を分析すると、授業中に生徒が英語を使う言語活動、教師の英語使用や英語力、ALTの活用状況などが生徒の英語力向上と関連していることが分かってきた」と説明し、同省として改善に取り組む姿勢を示した。
具体的には、各教委に今回の結果を踏まえた課題をフィードバックして、英語教育改善プランの見直しなどについて検討を促すことをはじめ、自治体の支援に向けて、同省のCBT(コンピューター使用型調査)システムに英語の「話すこと」などに関する問題の搭載や、特に課題がみられる自治体への個別のデータ分析・助言、さらにAIを活用した英語教育の実証研究を進める方針を示した。こうした対応について盛山文科相は「スピード感をもって英語教育の改善や、特に地域間の差について改善を進めたいと考えている」と強調した。