将来見据えたネットワーク環境を 新方針に向け、WGで論点に

将来見据えたネットワーク環境を 新方針に向け、WGで論点に
学校のネットワーク環境の整備について議論したWGの第4回会合=オンラインで取材
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 2025年度以降の学校のICT環境整備に関する新たな方針の方向性を話し合っている中教審のワーキンググループ(WG)は5月20日、第4回会合を開き、次期ICT環境整備方針の策定に向けて、学校のネットワーク環境整備をはじめとする具体的な論点の検討を行った。委員からは、デジタル教科書の活用など、今後さらにネットワーク環境に負荷がかかることを見越した先行的な整備を求める声が上がった。WGでは次回以降、取りまとめを視野に入れた議論に入る予定で、これを受けて文部科学省では新方針を策定し、それに基づく整備計画づくりに着手する。

 文科省では4月24日に、公立の全ての小、中、高校を対象にネットワークの通信速度を実測した調査結果を公表。同時に全ての授業で、多数の児童生徒が高頻度でGIGAスクール端末を活用しても、ネットワークが原因の支障がほぼ生じないとされる当面の推奨帯域を満たす学校は2割程度にとどまり、学校のネットワーク環境の改善が急務となっている。

 これを受けて、この日の会合で文科省から示された次期方針の具体的検討に向けた論点では、学校のネットワーク環境の整備が筆頭に位置付けられ、その改善に向けて、不具合の原因特定につながるネットワークアセスメントの徹底や通信契約の見直しなどが課題に挙げられた。

 ネットワーク環境の状況を把握することについて、中川哲委員(東京都港区教育委員会教育情報参事官、社会構想大学院大学教授)は、毎年実施するなど、継続的な調査と改善が必要だと指摘。デジタル教科書の普及をはじめ、ネットワーク環境を一層活用する状況が来るのを見越して「万が一の障害をどのように乗り切るのかを考えると、少し先の話になるかもしれないが、バックアップ回線を違う業者で契約しておいて、どちらかが使えなくても、どちらかが使えるような観点も将来に向けて考えておくべきだ」と提案した。

 堀田龍也主査代理(東京学芸大学教職大学院教授)も「デジタル教科書がリッチになっていったり、動画コンテンツを任意のタイミングで子どもたちが見たりする。学力調査もCBTで動画の問題が出る。そういうようなことを想定した時に、今はない状況になっても大丈夫なように、今のうちから足回り(の整備)をちゃんとやっていかないといけないというメッセージを、自治体に届けていく必要がある」と強調した。

 一方で、木田博委員(鹿児島市教育委員会教育DX担当部長)は、当面の推奨帯域を実現するにあたって、多くの学校や自治体で通信契約や回線の見直しなどを行う必要があるとの見通しを示した上で「どの方法を選択するにしてもコストが大きく跳ね上がることになる。自治体からすると、今後示された基準を達成するためには、通信費が格段に増えることを考慮した地方財政措置が必要だろう」と述べるなど、財政上の支援を求める意見もあった。

 現在の「教育のICT化に向けた環境整備計画」は今年度までとなっており、文科省ではそれに代わる来年度以降の新たな方針の策定を予定している。WGは次回会合から取りまとめに向けた議論に入り、それを踏まえて文科省が新たな方針を策定する。必要な経費を算定した上で、新たな方針を踏まえた整備計画の作成が行われる見通し。

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