高校教育の在り方について検討している中教審初等中等教育分科会のワーキンググループ(WG)は5月27日、第12回会合を開き、近年の高校改革による教職員の働き方への影響を議論した。委員からは、教員だけでなくコーディネーターなども含めた教職員定数の改善・配置をしていく必要性や、WGとしての議論も、高校の働き方改革を前提に考えるべきだとする意見が相次いだ。
この日の会合では、前回の主な意見をベースに、文科省の進める「高校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」や「新時代に対応した高校改革推進事業(普通科改革支援事業)」「マイスター・ハイスクール(次世代地域産業人材育成刷新事業)」の成果や取り組み状況について振り返り、中教審質の高い教師の確保特別部会が取りまとめた「審議のまとめ」のポイントを確認した上で、これからの高校教育における探究・文理横断・実践的な学びのための体制・環境整備をテーマにディスカッションした。
全国高等学校長協会(全高長)の新会長就任に伴い、前会長の石崎規生委員(東京都立桜修館中等教育学校校長)と交代した内田隆志委員(東京都立三田高校校長)は「もう定数を増やすほかに、われわれの仕事の改善はできないというところまで来ている」と、高校現場のひっ迫した状況を報告。「臨時的に人材を充てたり、外部人材もいろいろ工夫していたりしているけれども、外部の専門家を充てても、調整能力や発信力、生徒への対応は教員にしかできないところがある。そうした部分について、(教職員定数として)カウントして人を配置してもらえれば、高校教育はより良くなるし、探究も含めて大学との連携、高大接続もうまくいくのではないかと思っている」と、高校の教員の定数改善を訴えた。
岩本悠委員(地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事、島根県教育魅力化特命官)は、普通科改革支援事業を進める上で、教職員定数の改善の視点が抜けていると指摘。「(支援事業が目指す)新しい普通科というと、専門学科や総合学科ほどの教職員定数にならないにしても、普通科と専門学科の間くらいの教職員定数を算定するような形で、加配ではなくしっかり(定数として)措置する形にしていかないといけないし、それを起点に高校標準法自体の見直しなども合わせてやっていくような議論も必要ではないか」とくぎを刺した。
また、外部の関係機関と連携するコーディネーターについても、教員が担うのではなく、職員を別途、配置していく方向にしなければ、教員の負担が増えてコーディネーターへの財政措置が行われない二重苦の構造に陥ってしまうと危惧した。
こうした意見を受けて、青木栄一委員(東北大学大学院教育学研究科教授)も「高校を主として念頭に置いた働き方改革を、このWGの議論を貫く横串として(結論を)まとめていただきたい」と要望。特に高校は学科や課程が多様であることから、質的な実態把握を踏まえて考える必要があるとした。