前年の猛暑に匹敵する暑さが予想される2024年の夏に向けて、子どもたちの熱中症予防のため、汗の体温調節機能を解説したアニメーション動画が公開されている。早稲田大学スポーツ科学学術院の細川由梨准教授と新潟大学人文社会科学系の天野達郎准教授らによる研究グループが制作した「汗のやくわり」(2分36秒)と題した動画で、「子どもたちが自身の体の状態を的確に認識し、主体的に熱中症から身を守る行動を取ってほしい」という思いが込められている。
動画は小中学生向けに制作。3分を切る短い動画の中に体のメカニズムについて科学的な説明のエッセンスが盛り込まれているが、小学生でも理解できる易しい内容。普段、スポーツや外遊びで汗をかく力が鍛えられ、熱中症予防につながることを分かりやすく解説し、汗をかいた後の注意事項を伝えている。
熱中症対策はどの学校でも取り組まれているが、細川准教授は「正しい知識が正しい行動を促すようにならないと、効果的な予防につながらない」と強調する。細川准教授らはこれまで、学校関係者やスポーツ関係者を対象に数多くの熱中症対策セミナーに臨んできたが、「熱中症対策の重要性は理解していても、具体的にはどうしたら良いか分からない」という声もあり、認識と実践のギャップに直面してきた。動画では、普段からの適切な運動や、小まめな水分補給が必要なのか科学的なポイントを組み込んで解説し、子どもたちにもできる具体的な熱中症予防の行動を示している。
また、水分補給の正しい習慣を子どものうちに身に付けることは成人後の健康にもつながるといい、研究グループでは21年度に「からだと水分」(3分1秒)という動画も公開し、夏場以外でも適切な水分補給は重要だということを解説している。今回は第2弾の動画制作。当初、小学3、4年生をメインターゲットにしていたが、学校現場からは高学年や中学生でも使えるといった声がフィードバックされ、幅広い年齢層に対応できそうだという期待が広がった。
「学校ではタブレット端末が普及し、以前よりも動画が使いやすい状況だと思う。また、最近はディスカッションを取り入れた授業も多いので、熱中症を防ぐためには、どのような行動を取ったらよいかを考え、知識を実践に結び付ける教材として使ってもらいたい」
細川准教授はこうアピールする。今後も学校現場の声を聞きながら、必要な情報を発信していきたいと意欲を示している。
動画「汗のやくわり」は公開ウェブページから閲覧できる。