私立高校を経済的な理由で中退した生徒が倍近くに増えているとみられることが6月6日、全国私立学校教職員組合連合(全国私教連)の調査で浮かび上がった。経済的な理由で中退した生徒が複数いた私立高校も増えており、文部科学省で記者会見を行った全国私教連の山口直之中央執行委員長は「各家庭で学費負担が重たくなってきている」と警鐘を鳴らした。
調査は1998年度から毎年実施しているもので、24年3月末までの1年間に、経済的な理由により中退した生徒や3カ月以上の学費滞納の有無などを聞いた。私立高校は34都道府県329校、私立中学校は28都府県158校から回答を得た。
その結果、経済的な理由で中退した生徒は62人で、22年度と比べて28人増加した。回答した高校の生徒数で割った中退率は0.022%で、コロナ禍前の水準に戻りつつある。
経済的な理由で中退した生徒のいる私立高校は17都県30校で、回答のあった高校の9.1%(前年度比2.4ポイント増)を占めた。こうした生徒が複数いる学校は、8都県12校と前年度より6校増えた。
学費を3カ月以上滞納した生徒は28都府県108校で、全体の32.8%に上り、前年度よりも16校増えた。滞納した生徒は558人で、回答のあった高校の全生徒数の0.20%を占め、いずれも前年度より減少した。
私立中学校での経済的理由による中退は3府県3校に3人おり、3カ月以上の学費滞納は15都府県34校に45人いた。
山口中央執行委員長は「中退者数が増え、複数の中退者が出た学校が増加している状況が広がっている。この点から、やはり各家庭で学費負担が重たくなってきていると言える」と指摘。大阪府や東京都などで私立高校も含めた所得制限のない高校無償化が進んでいる一方で、都道府県によって高校の就学支援策に差がある現状を踏まえ、当面の政策課題として、年収910万円未満世帯までの私立高校の授業料無償化を全国一律に実施すべきだと提言した。