学費値上げ巡り東京大学で学生が反対集会 総長対話予定も

学費値上げ巡り東京大学で学生が反対集会 総長対話予定も
学費値上げに反対する緊急集会で決議に賛成する学生たち=撮影:山田博史
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 東京大学が授業料の値上げを検討していることが分かり、反対する学生たちの緊急集会が6月6日、東京大学本郷キャンパスで開かれた。集会には約400人が参加し、値上げ案の撤回や学生不在で値上げの検討を進めることへの抗議などを盛り込んだ決議が採択された。同学では今月中にオンラインによる総長と学生らによる対話が予定されており、参加した学生たちは抗議の意思を示すことにしている。

 東京大学関係者によると、同学は来年度に入学する学生から、年間53万5800円の授業料を20%引き上げて約64万円にすることを検討しており、先月中旬に学内会議で説明されたという。国立大学の授業料は文部科学省の省令で標準額が53万5800円に決められているが、標準額の20%までの増額が認められている。

 この動きに対して学生有志でつくる「学費値上げ反対緊急アクション」や学生自治会など10の学生団体の共催による緊急集会が開かれ、オンラインで結んだ駒場キャンパスの学生も含めて約400人が参加した。授業料値上げを巡って学生には学務システムで「現段階で検討中」との連絡があったのみといい、冒頭、主催した学生は「秘密裏かつ拙速に学生の意見を聞かずに値上げの検討が進められることに、怒りや不安があると思う。学生の意思を示そうと集会の準備を進めてきた」と述べた。

 集会では授業料値上げ案の撤回をはじめ、学生不在で検討が進められたことへの抗議、公開の場での学生諸団体との交渉を要請することなどを盛り込んだ決議文が配布され、作成にあたった学生が「東大憲章では学ぶにふさわしい資質を有する全ての者に門戸を開くと規定しているが、値上げされれば経済的な理由で入学・進学を断念せざるを得ない人が増えることが容易に想像される。この理念に反している」などと訴えた。

 続いて参加した学生から意見が出され、学生の1人は「値上げは高等教育の無償化の流れに逆行している。さまざまな大学と連携して高等教育予算の拡大を訴えるとともに、次の世代に教育を受ける権利を引き継ぐためにも反対する」などと主張した。

 集会では同学の教授3人も登壇し、日本の大学で公的費用支出が少ない中で値上げすることや、値上げの理由が明確に説明されていないこと、学生に説明されていないことなどを批判し、学生たちに支援の言葉を送った。その上で教授の1人は「東大には富裕世帯出身学生が多いとみられており、社会全体から支持を得るにはきちんとしたロジックが必要。国立大学以外の学生や非進学者が置かれる苦しい状況も視野に入れて考えてほしい」と呼び掛けた。

 決議は、学生たちの挙手で採択され、近く大学側に提出される。大学側は今月21日に学生と話し合う総長対話を予定しており、集会に参加した学生たちは授業料の値上げに抗議の意思を示すことにしている。

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