食と農の循環を学ぶ学校の実践例など紹介 23年度食育白書

食と農の循環を学ぶ学校の実践例など紹介 23年度食育白書
iStock.com/EIJI OGURA
【協賛企画】
広 告

 2023年度の食育白書が6月7日に閣議決定され、公表された。今回の白書では、特集として子どもや若い世代での食育の取り組みに焦点を当てて、学校給食の残渣(ざんさ)で作った堆肥を活用して栽培した野菜を、給食の食材として提供し、食と農の持続可能な資源循環を学ぶ事例などが紹介されている。農水省では「学校など各現場の課題に応じて参考にしてほしい」と活用を呼び掛けている。

 今回の白書の特集テーマは、「農林水産業に対する国民理解の醸成」と「子供・若い世代を中心とした食育の推進」。ウクライナ危機など食料安全保障を巡って情勢が大きく変化する中、産地と消費地の結び付きを強化する取り組み事例を紹介するとともに、バランスのよい食事が取れていないと言われがちな若い世代の食育に関する意識や、食育の実践などの取り組み事例などをまとめた。

 この中では、農水省が実施した「食育に関する意識調査」で若い世代で食育に関心がある人の割合が低い上、朝食の欠食などの課題が見られたことを踏まえ、若い世代の健全な食生活の実践に向けて国や自治体などが協力して取り組むことが必要だと指摘し、学校や保育などで学習や体験活動を通し、食料の生産から消費に至るまでの食の循環を学ぶなど、食育の推進に努める必要があると強調している。その上で、食育の推進に先進的に取り組む事例を紹介している。

 このうち神奈川県鎌倉市にある横浜国立大学教育学部附属鎌倉小学校では、給食の残渣で作った堆肥を使って、農薬を使わずに野菜を栽培・収穫している。さらに保護者有志によるPTA活動では、堆肥を使って栽培・収穫した野菜を給食に提供しており、こうした取り組みを通して児童たちは食と農の持続可能な資源の循環を学んでいる。

 また、埼玉県熊谷市の市立妻沼(めぬま)小学校では、給食に必要な食材が思うように購入できなかったことをきっかけに、栄養教諭の発案で、学校敷地内にある畑で野菜を栽培・収穫して給食に提供する「エディブル・スクールヤード」という取り組みを進めている。今では授業とも関連付けて米やタマネギ、キャベツなど20種類の作物を栽培しており、地域の農業を支えていけるような心を育む活動として取り組みを続けている。

 ほかにもJA(農業協同組合)などと連携して農業体験を重ねる幼稚園の取り組みや、郷土の食材や郷土料理の伝承活動を中心とした食育活動を継続して展開している地域の事例などが紹介されている。

農水省消費者行政・食育課は「学校や地域ごとに課題や事情は異なると思うが、参考にしていただけそうな事例をできるだけ多く紹介しているので、解決につながるヒントを得られる事例を見て、今後の活動の参考にしていただきたい」と話している。

広 告
広 告