修学支援新制度の学業要件 出席率と単位数を1割引き上げへ

修学支援新制度の学業要件 出席率と単位数を1割引き上げへ
大学などの修学支援新制度の報告書を巡り議論話した検討会議=オンラインで取材
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 大学などの修学支援新制度の在り方について検討してきた文部科学省の検討会議(座長・福原紀彦日本私立学校振興・共済事業団理事長)は6月17日、最終回となる第4回会合を開き、大学などへの進学後に支援を継続するかどうかの基準となる「学業要件」の見直しを巡り報告書案をまとめた。この中で授業への出席率の要件について、現行の「5割以下」から「6割以下」へ、修得単位数の要件は標準単位数の「5割以下」から「6割以下」へとそれぞれ引き上げることを盛り込んだ報告書案が示され、おおむね了承された。新たな学業要件は来年度から適用される見通し。

 低所得世帯の学生らを支援する修学支援新制度は、2023年度に約34万人が支援を受けるなど成果を出してきたが、25年度から多子世帯の授業料が無償化されるなど対象学生が拡大することを踏まえ、現状の学業要件の見直しについて検討会議で議論を進めてきた。

 最後の検討会議となった同日、これまでの議論や関係団体からの意見聴取などを踏まえて報告書案が示された。同制度では、採用時の要件は緩やかにする一方、進学後は学生などの学修状況について一定の要件を課しており、これに満たない場合は支援を打ち切る「廃止」や認定の効力を停止する「停止」、学業成績が不振であると警告する「警告」の措置を取ることにしている。報告書案では、基本的な考え方は維持するとした上で、出席率や修得単位数などについて具体的な要件の見直し案を示した。

 このうち出席率に関する「廃止」要件については、現行では「履修科目の授業への出席率が5割以下であること」とされているが、出席率は学びの意欲を測る一番の指標であるとの意見などを踏まえ、学生の学修意欲を喚起する効果を高めるために基準を「6割以下」に引き上げる案を示した。

 また、単位数については、「修得した単位数の合計数が標準単位数の5割以下であること」とされているが、「標準単位数の6割以下は留年が決定する低さであり『警告』の意味をなさない」との関係団体の意見などを踏まえて、「6割以下」に引き上げる案を示した。「警告」要件については、出席率の「8割以下」は現行のまま変更せず、単位数については標準単位数の「6割以下」から「7割以下」に引き上げた。

 ただし、傷病や災害など不慮の事情がある場合には、廃止や警告としないこととし、不慮の事情とすべき場合については文科省がQ&A方式などで具体的に大学などに示すことを付け加えた。

 一方、成績評価の指標である「GPA(Grade Point Average)」について、現在、その学部で下位4分の1に入ると「警告」を受け、この要件のみで警告が2回連続すると「停止」となることについても見直しが必要かどうか議論されてきたが、「停止」の仕組みは昨年10月から導入されたばかりで、その効果を把握することが必要などとして、変更しないことが適当とされた。

 ただし、「停止」の効果などを踏まえて今後検討することや、各学部が過去のGPA下位4分の1となる水準を学生に示すなどの工夫を求めた。

 報告書案はおおむね了承され、各委員からは「制度を周知することも必要だが、内容が分かりづらく、シンプルにしていくことが一番大事だ」「不慮の事情というものがどこまで当てはまるのか、できるだけ明確に示すことが必要だと思う」などといった意見や要望が出された。

 報告書の文言は福原座長に一任される。早ければ今月中に文科省のホームページに掲載され、新たな学業要件は来年度から適用される見通し。

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