いじめ重大事態調査の素案 平時の備えや初動対応強調

いじめ重大事態調査の素案 平時の備えや初動対応強調
いじめ重大事態の調査ガイドライン素案が示された文科省の有識者会議=オンラインで取材
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 いじめ防止に向けた実効的な対策などを議論している文部科学省の「いじめ防止対策協議会」(座長・新井肇関西外国語大学教授)の今年度の初会合が6月19日開かれ、いじめの重大事態の調査に関するガイドライン改訂の素案が示された。重大事態の発生が過去最多に上る中、未然防止に向けた平時からの備えや初動対応などがきめ細かく盛り込まれ、学校や関係者の対応をより明確化した。今後、パブリックコメントを経て、今年秋ごろの改訂を目指している。

 いじめの重大事態の調査に関するガイドラインは2017年に策定されたが、重大事態の発生が増加傾向にある上、学校と教育委員会の連携不足による対応の遅れや説明不足による保護者とのトラブルなどさまざまな課題が生じており、改訂されることになった。

 素案では、第2章に重大事態発生を防ぐための「平時からの備え」が新たに設けられた。重大事態の発生時に適切に対応できるよう、教職員など関係者がガイドラインや生徒指導提要の理解を深めることや、各校のいじめ対策組織が実効的な役割を果たせるよう平時から学校外との連携体制をつくることを求めている。教委には職能団体と連携できる体制の構築が望ましいとしている。

 初動対応の重要性もより強調された。調査中も事態が動いている可能性があることを考慮して、調査と並行して対象児童生徒への心のケアと支援を行うことや、犯罪行為として扱われるべきいじめであることが明らかな場合は、警察に相談して連携するのが必要であることが明記された。

 重大事態を調査する主体については、第三者を加えた組織となるよう努めることを示すとともに、中立性・公平性を確保するため、「専門家と第三者」の考え方も整理して詳しく記載した。専門家は弁護士や医師などが想定され、第三者は職能団体から推薦があった場合などが考えられるとしている。

 さらに対象児童生徒や保護者などへの事前説明の必要性も強調された。事前説明は重大事態が発生したと判断したときと調査組織が整った段階の2段階に分けて行うことが望ましいとするなど、手順や説明事項について詳しく記載された。

 素案の内容について各委員はおおむね賛同しつつも、要望が相次いだ。八並光俊委員(日本生徒指導学会会長)は「目配りの効いたガイドラインになっているが、重大事態が起きないように生徒指導提要などを全教職員が研修などで理解することが必要だ。教職員の基本的な知識不足が否めないケースもあるので、こうした備えは非常に大きな意味を持つ」と強調した。

 中田雅章委員(日本社会福祉士会副会長)は平時の備えに関して、「学校のいじめ対策組織について平時から実効的な組織体制を構築するとあるが、もう少し具体的に書き込めないか。例えば定例会議を開く回数の目安などがあると、学校も分かりやすいと思う。さらに職能団体についても具体的な学会名など現場が人選しやすいように書いた方がいい」と提案した。

 清原慶子委員(前東京都三鷹市長)は「改訂したガイドラインは文科省から各教委に通知されると思うが、こども家庭庁からも各地の首長部局に通知してほしい。教育部門と子育て関係部門で社会総がかりでいじめ防止に取り組むことにつながると思う」と要望した。

 同日示された素案は文言を修正してパブリックコメントにかけられた上、各方面からの意見を盛り込んで改めて次回の会議で検討される。今年秋ごろをめどに内容を決定し、全国に周知される見通し。

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