幼児教育の考え方を小学校に 有識者検討会が中間整理案

幼児教育の考え方を小学校に 有識者検討会が中間整理案
中間整理案が示された幼児教育の有識者検討会=オンラインで取材
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 今後の幼児教育の教育課程の在り方などを議論してきた文部科学省の有識者検討会は6月19日、第8回会合を開き、これまでの議論を踏まえた中間整理案について協議した。中間整理案では、自発的な活動としての遊びを通した学びが小学校以降の生活や学習の基盤になっているとし、幼保小連携について、いじめや不登校の観点も含め多面的に掘り下げ、幼児教育の考え方を参考にした小学校の教育実践を広めていく考えを打ち出した。

 昨年12月に設置された有識者検討会は、幼稚園教育要領、保育所保育指針、幼保連携型認定こども園教育・保育要領の3要領・指針に基づく教育活動の成果や課題の検証、今後の幼児教育の教育課程、指導、評価について一体的な議論を重ねてきた。

 この日の会合で示された中間整理案では、幼児教育施設は3要領・指針に基づき、意図的・計画的に幼児が関わりたくなるような魅力的な環境を構成し、幼児が主体性を発揮しながらその環境に関わる遊びや生活を展開することにより、幼児の発達を促す「環境を通して行う教育」を基本としており、友達と一緒に遊ぶ中で人間関係を深めるなど、遊びを通しての指導を中心的に行っていることの重要性を確認。

 少子化や情報化、過疎化などにより、幼児の遊びや生活が変化し、自然との触れ合いや他者との直接的な関わりが減少していることから、幼児教育施設でこうした豊かな体験の機会を積極的に設けていく必要があること、幼児の自発的な活動としての遊びを通した学びは、小学校以降の生活や学習の基盤となるだけでなく、言語能力、情報活用能力、問題発見・解決能力など、社会のつくり手として必要な力の育成につながっていることを強調した。

 一方で、3要領・指針は大綱的な基準であり、一部の幼児教育施設では子どもの興味・関心ではなく、SNSからの偏った情報やそれらに影響を受けた一部の保護者のニーズを優先するなどして、幼児の発達にふさわしくない教育活動が行われていることを懸念。今後、少子化の進行とともに保護者の期待が過熱し、幼児教育施設の競争が激化することで、必ずしも適切とは言えない教育が行われていくことが危惧されると警鐘を鳴らした。

 また、幼児教育と小学校教育の接続では、一部の地域で幼保小の接続を意識した教育実践が取り組まれ始めているなどの成果が出ている一方で、幼児教育施設と小学校の連携・接続を進めることは容易でないことや、幼児教育で育みたい資質・能力が小学校の各教科の資質・能力にどうつながっているのか理解するのが難しいといった声が、小学校側に根強くあることなどを課題に挙げた。さらに、小学校低学年でのいじめの認知件数の多さや不登校児童の増加率が高いことを踏まえると、いじめや不登校対策の観点からも、幼保小接続期の教育の充実について検討を行い、対策に取り組むことが重要だと指摘した。

 その上で、小学校では、幼児期に幼児自らが遊びに向かう自発性を大切にした環境を通した教育が行われていることや、その遊びの中から小学校以降の生活や学習の基盤である資質・能力が育まれていることを踏まえ、児童が主体的に自己を発揮しながら学びに向かえるようにしていくこと、授業や学習の楽しさや充実感を得ながら基礎的な学力を身に付けていくようにすることが重要だとし、ICT環境や先端技術も活用しつつ、環境を通して行う幼児教育の基本的な考え方を参考にした効果的な教育実践の研究・普及を行っていくことが考えられるとした。

 この他にも中間整理案では、幼児教育施設でのICTの活用や特別な配慮を必要とする幼児への指導、地域における幼児教育施設の役割などに言及。条件整備に関して、複数の施設類型や私立園が多い中でも、幼児教育と小学校教育の接続などの観点から、設置者や施設類型を問わず、教育に関する指導・助言、研修の実施、専門人材の育成について、教育委員会が積極的に関与していく必要があると踏み込んだ。

 この日の議論では、奈須正裕座長代理(上智大学総合人間科学部教授)が「環境を通して行う教育とセットのものとして、幼児教育では幼児は生まれながらにして自ら学びを展開していく力を有しているという考え方を基にした子ども観がある。つまり、子どもは有能な学び手ということがとても大事で、これがあるから環境を通して行う教育ができる。小学校でもこの考え方を共有してほしいということを入れてはどうか」と提案するなど、幼保小連携についての意見が多く出た。

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