次期ICT環境整備方針の素案 個別最適・協働的な学びの基盤に

次期ICT環境整備方針の素案 個別最適・協働的な学びの基盤に
次期ICT環境整備方針に向けて取りまとめ素案を検討したWG=オンラインで取材
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 2025年度以降の次期ICT環境整備方針に向けて議論を重ねてきた中教審初等中等教育分科会デジタル学習基盤特別委員会のワーキンググループ(WG)は6月24日、第5回会合を開き、取りまとめに向けた素案を検討した。GIGAスクール構想による1人1台端末の更新を円滑に実施するために都道府県単位で共同調達を行うことになった「GIGAスクール構想加速化基金」の補助要件に沿った整備を進めることや、文部科学省の調査で課題が明らかとなった個別最適な学びと協働的な学びの充実に必要なネットワーク速度の確保を求めた。

 学校のICT環境整備は、現行の整備方針がスタートした後、コロナ禍で1人1台端末の整備が大幅に前倒しされた一方で、活用頻度や使い方には依然として自治体間の格差があり、次世代校務システムの導入などは道半ばといった状況がある。

 こうした課題を踏まえ、素案では、次期整備方針について「円滑なクラウド活用を前提とした1人1台端末をはじめとする学校のICT環境は、これまでどおりの指導や学習を単に効率化するための付加的な整備ではなく、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実等を図る上で必要不可欠な学習基盤である」ことを基本方針に据え、現行の整備計画をベースに、急速に進んだICT環境の整備によって顕在化した課題に対応しつつ、外部環境の変化を十分に踏まえた改訂とすること、次期学習指導要領の方向性が定まった段階で、改めてその実施のために必要なICT環境の整備について検討する考えを示した。

 その上で、昨年度補正予算で計上された「GIGAスクール構想加速化基金」で補助要件とされた端末のスペックや都道府県単位の共同調達、指導者用端末の整備、フィルタリングの導入、故障時の予備機の確保などを次期整備方針でも前提とすることを確認。これに加えて、学校に整備されたネットワークでは、端末の利活用が進む中で負荷に耐えられず、不具合が解決されないケースもかなり見受けられると指摘し、個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実のために必要とされる文科省が定めた当面の推奨帯域を確保するために、ネットワークアセスメントの実施による不具合の原因特定や通信契約の見直し、校内LAN環境の改善が急がれるとした。

 また、次世代校務DX環境の本格的な整備では、文科省の実証事業の成果も活用しつつ、段階的に進めていくものとし、具体的には①クラウド対応の校務支援システムの整備とともに、校務用サーバーがクラウド環境に移行する②学習系・校務系ネットワークが統合された際の指導者用端末と校務用端末の在り方が多様になり得る③多要素認証など、強固なアクセス制御に基づくセキュリティ対策が必要になる――ことなどを考慮する必要があるとした。

 素案についてこの日の議論では、自治体の受け止め方を視野に入れた意見が相次いだ。

 柴田功委員(神奈川県立上鶴間高校校長)が「個別最適な学びと協働的な学びの一体的な学びというのがGIGAスクールによる学習の成果と説明をしていくことになるが、保護者や各自治体の予算担当者に(そうした学びの)具体的なイメージが届くかどうか少し心配だ。授業のイメージができる表現を加えていくといいのではないか」と提案。堀田龍也主査代理(東京学芸大学教職大学院教授)は、整備方針が地方財政措置であることを踏まえ「各自治体が自分の自治体の学びの保障をちゃんと検討し、その上で明確な意思を持ってしっかり整備をするのであれば、一定の自由度が保たれる。それが読み取れるように書く必要がある」と指摘した。

 素案はこの日の議論などを踏まえ修正が加えられ、次回会合で取りまとめられる見通し。

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