2023年度の全国学力・学習状況調査に盛り込まれたウェルビーイングに関する質問への回答を分析した結果、全体的に児童生徒の幸福感は高いとみられることが、京都大学人と社会の未来研究院の内田由紀子教授らの調査で6月27日までに分かった。児童生徒の幸福感を高めるために重要なのが友達関係や教師のサポートであることも分かり、内田教授は「学校では成績などより、他者とのつながりが児童生徒の幸福感を向上させる上で重要な役割を果たしていると伺える。子どもたちを支えるためには、働き方の改善など教師のウェルビーイングも重要であると強調したい」と話している。
この調査分析結果は、内田教授が委員を務める同25日の中教審総会で報告された。報告によると、内田教授らは、児童生徒のウェルビーイングの状態を調べるため、関連する要素である「学校や地域のつながり」「サポートを受けられる環境」「自己肯定感」に関わる項目について重点的に検討を行った。この中で、幸福感に関わる「学校に行くのは楽しいと思いますか」「普段の生活の中で、幸せな気持ちになることはどれくらいありますか」の2項目について、1~4点(数値が高いほど幸福感も高い)で主観的幸福感を数値化した結果、平均値は小学生で3.35、中学生は3.24と、いずれも高い結果が示された。
ただし、全国学力・学習状況調査は悉皆調査とはいえ、不登校などで回答していない子どももいる点には留意が必要としている。
内田教授らは、こうした主観的幸福感がどんな要素と関連しているかさらに詳しく分析したところ、「友達関係」や「教師サポート」と強く関係していることが分かった。「教師サポート」については、「先生はよいところを認めてくれている」「分かるまで教えてくれる」「先生や学校にいる大人にいつでも相談できる」といった質問項目があり、学習だけでなく、生活を含めた多様な場面での教師のサポートが幸福感につながっていると考えられるとしている。
一方、今回の調査分析では、成績や社会経済的背景は、主観的幸福感とほとんど関連していないという結果も示された。これを踏まえて内田教授は「学校では、学力より友達や教師との関係など他者とのつながりが幸福感を向上させる重要な役割を果たしている」と分析した上で、「教師が児童生徒をサポートするためには、教師にも心や時間の余裕が必要。サポートを提供する教師の働き方改善など、教師のウェルビーイングも重要であると強調したい」と述べた。
内田教授の報告を受けて、中教審総会では「不登校の児童生徒などが含まれないことを前提として考える必要はあるが、学校の教員へのサポート体制が必要だとはっきりしたことは意義がある」などと感想が述べられたほか、「国際的な調査では日本の子どものウェルビーイングは高くないと言われているが、今回の調査は何が違うのか」と国際調査との比較について質問する声が上がった。
これについて内田教授は「OECDの調査では、多岐にわたる質問の中で生活への満足度や人生に意味や目的があると考えるかといった聞き方をしているが、今回の質問では答えやすいように『学校が楽しいか』などという言い方にしている」と質問の仕方に違いがあることを説明した。