2040年以降を見据えた高等教育の目指すべき姿などを検討している、中教審の「高等教育の在り方に関する特別部会」の7回目の会合が6月28日開かれ、中間まとめ案が示された。少子化が急速に進む中、高等教育機関は「決定的に重要な存在」だとして、質の向上や規模の適正化、地方での高等教育へのアクセス確保などに向けた具体的な方策が示された。委員からは「国民的議論を盛り上げるために、もっと社会に訴える書き方をしてはどうか」「2040年以降を見据えるなら、そこまでに何をするかタイムラインを示す必要がある」などの意見が出された。
中間まとめ案では、急速な少子化で今後、募集停止や経営破綻に追い込まれる大学などが生じることが避けられない中、質の高い高等教育へのアクセス確保への対応は「待ったなしというべき状況」と危機感を示し、超高齢社会を支える技術革新などをもたらす高等教育機関は決定的に重要な存在であると強調。その役割を果たすためには「質のさらなる高度化」「規模の適正化」「アクセスの確保」が必要だとして、具体的な方策を示した。
「質のさらなる高度化」については、文理横断・文理融合教育や実践的な教育研究の推進、「出口における質保証」の視点から学生に対する厳格な成績評価や卒業認定の促進などが盛り込まれた。「規模の適正化」については、将来の学生確保の見通しも踏まえた設置認可審査の適正な実施や、再編・統合の推進に向けた教育研究力の強化や縮小・撤退への支援が打ち出された。「アクセスの確保」については、地方を中心に入学者数の減少による学生募集停止が相次ぐ中、各地域で高等教育へのアクセス確保の具体策を早急に講じることが求められるとして、地域の人材育成の在り方について議論する場の構築や国における司令塔機能を果たすための組織の整備などが盛り込まれた。
その上で質の高い高等教育を実現するための財務構造について、公財政支援の在り方や授業料を含む個人・保護者負担の在り方などについて議論を重ねることが重要と指摘するとともに、社会の理解を得るためにも各機関の活動の成果をしっかり社会に発信することも必要だと強調している。
この中間まとめ案に対して各委員が意見を述べた。
大森昭生委員(共愛学園前橋国際大学・短期大学部学長)は「大学がこの国に必要だという国民的議論を盛り上げるために、社会にもう少し訴える形にしていいと思う。また地域の高等教育をけん引する役目として、各県にある国立大学がリーダーシップをとることを盛り込んでもいいのではないか」と述べた。
伊藤公平委員(慶應義塾長)は「2040年以降のあるべき姿といっても、そこまでに何をするかタイムラインで示す必要があるのではないか。それによって適正規模やどれくらいお金が必要であるかなどが見えてくる。そこが中間報告ではあいまいだ」と指摘した。
こうした意見を踏まえて永田恭介部会長(筑波大学学長)は「ある意味で教育国家観をもって議論する必要があると思う。高等教育の受益者は学生本人であり国であると思うが、日本が世界に冠たる国を目指すなら相当の教育が必要で、お金もかかるのは当然だ。性根を決めて具体的なことを主張していかないといけないのではないか」と強調した。
次回会合は大学分科会との合同会議となり、今回の委員の意見を踏まえて修正した中間まとめ案が改めて示される。