熱中症搬送者数を8都道府県で予測 学校現場でも活用を

熱中症搬送者数を8都道府県で予測 学校現場でも活用を
8都道府県の熱中症搬送者数の予測値を公開しているウェブサイト
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 学校現場の熱中症対策などに役立ててもらおうと、名古屋工業大学大学院の平田晃正教授らの研究グループは7月9日、1週間先までの熱中症搬送者を予測する技術を開発し、東京や大阪など8都道府県の予測値についてウェブサイトで公開を始めたと明らかにした。一足早くこの技術を応用した熱中症予測データを昨年から学校に送る取り組みを始めた名古屋市では、子どもの熱中症の搬送者数が約2割減った実績があり、平田教授は「学校では教員の判断で子どもの熱中症を防ぐことができる面があり、体育の授業など屋外の活動に役立ててほしい」と呼び掛けている。

 熱中症による搬送者数の予測値の公開を始めたのは、「熱中症搬送者数予測サイト」。東京、大阪、愛知、福岡、宮城、新潟、広島、北海道の8都道府県(北海道は参考値)のデータが掲載されている。搬送者数の予測が75人以上になると赤、100人以上になると紫と都道府県名が色分けされており、都道府県名をクリックすると、その地域での今後1週間の搬送者数の予測値や、過去の予測値と実測値を比較したグラフなどが表示される。1週間の推測値は10月末まで、毎日午前3時ごろに更新される。

 研究グループは、全国的に熱中症の患者数が増加の一途をたどり、特に子どもや高齢者がリスクにさらされている中で、熱中症対策に役立てようと予測技術の研究に乗り出した。体内温度上昇と発汗量を解析する手法をベースに気象データを加えた大規模シミュレーションなどを使って、熱中症による搬送者数を推定できる予測式を開発したという。ウェブサイトで用いられている予測式は、2013~19年の6~9月の気象データと約14万件の熱中症搬送者データを分析して作られたといい、全体的に誤差は20%以内にとどまっているという。

 名古屋工業大学は名古屋市消防局と協力して、一足早く23年度から市内の小中高校など415校に今回の技術を応用した「熱中症リスク予測データ」を送る取り組みを始めた。その結果、小中学校での熱中症の搬送者数は約2割減ったという。学校での活用方法については、搬送者数が多数に上ると予測される日は体育の授業を中止したり、教育委員会の判断で屋外授業を制限したりすることが考えられる。

 平田教授は「熱中症のリスクの高い高齢者と子どもの対策に特に役立ててほしいと思って開発を進めた。特に学校関係では、子どもの行動を管理する教員の判断によって熱中症を防ぐことができる側面がある。一定の効果も出ているので、ぜひ活用してほしい」と呼び掛けている。

 ウェブコンテンツに掲載する都道府県は大都市を中心に順次、拡大し、来年には全都道府県の公開を目指すことにしている。ウェブサイトはこちら

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