将来の高等教育の目指すべき姿について、中教審の「高等教育の在り方に関する特別部会」がまとめた「中間まとめ案」を巡って、同特別部会と上位会議である同大学分科会の合同会議が、文部科学省でオンラインを併用して7月19日に行われた。急速な少子化などが深刻な課題となる中、分科会委員からは、大学などの「規模の適正化」に対する要望や、高等教育の質向上などに向けて財政支出を強く求めるべきだといった意見が相次いだ。中間まとめは8月中に公表される見通し。
今年6月に同部会が示した中間まとめ案では、急速な少子化が進む中で2040年以降の社会を見据えた高等教育が目指すべき姿などが示された。今後の高等教育政策の方向性として、教育研究の質のさらなる高度化や、学生数不足による質の低下を避けるための規模の適正化、地域における質の高い高等教育へのアクセス確保の3つを示すとともに、高等教育の規模の適正化に向けた支援や、地理的観点からのアクセス確保に向けた具体的な方策が盛り込まれた。その上で質の高い高等教育の実現に向けて、公財政支援の在り方や授業料を含む個人・保護者負担の在り方などについて議論を重ねることが重要だと強調する内容となっている。
合同会議では、この中間まとめ案に対して大学分科会の委員が意見や要望を述べ、特に「規模の適正化」や財政支出の必要性を巡って意見が相次いだ。
村田治副分科会長(関西学院大学名誉教授)は「地方の大学などの活性化には地方の産業活性化が極めて重要であり、文科省だけでなく政府全体としてその地方をどんな産業を中心に活性化し、大学の専門分野を何にするか考える必要がある。アクセスと少子化は極めて密接に関係するので、大きな視点で考えないと根本的な解決にならないのではないか」と問題提起した。
志賀啓一委員(学校法人志學館学園理事長)は「市場原理に基づき、定員未充足になるところを淘汰(とうた)するという安易な考えでは、社会に必要な分野が消えて社会構造が崩壊しかねないと話してきたので、規模とは『社会的に適切な規模』と定義していただいたことに感謝する。今年に入って日本私立短期大学協会が把握するだけで短大23校が保育士や栄養士などの養成に関して募集停止を発表している。安易な数字だけを並べて淘汰することがないよう、省庁横断的な人材育成の検討を加えてほしい」と要望した。
財政支援を巡っては、金子晃浩委員(全日本自動車産業労働組合総連合会会長)が「再び科学技術立国を目指すには、OECDの中で明らかに劣る公的支援を拡大していくことは必須だ。ぜひ公財政支出を拡大することをこの場から提起し、最終まとめの段階では必要な予算措置を含めて具体的にしっかり記載してほしい」と要望した。
髙宮いづみ委員(近畿大学副学長)も「財政支出が不可欠だと中教審から言える重要な機会だと思う。高等教育への支出がOECDの38か国中37番目では、日本が浮き上がる可能性を極めて低めてしまう。高等教育への支出は国全体に返ってくる有益なものであると、もっと言わないといけない」と強調した。
中間まとめの文言修正は永田恭介特別部会長(筑波大学学長)に一任され、8月中に公表される見通し。