今後の幼児教育の教育課程などを議論してきた文部科学省の有識者検討会は7月24日、第9回会合を開き、子どもの発達における豊かな体験や遊びをベースとした幼児教育の重要性や、小学校教育との円滑な接続に向けた取り組みの強化などをうたった中間整理について大筋で了承した。前回会合までの議論を基に、新たに小、中、高校生をはじめとする地域との交流が、幼児教育施設の役割の一つとして付け加えられた。
前回会合での意見などを基に、この日示された中間整理案では、文言の修正や追加が行われた。例えば、幼児教育施設の評価について、定量的に優劣を決め、ランク付けする成績表のようなものではなく、幼児の姿の変容を捉えながら、その姿が生み出されてきたさまざまな状況が適切かどうかを検討し、教育をよりよく改善する手掛かりとするものだとする考え方や、幼稚園などで行われている預かり保育の担当者の多くが非正規職員だったり、教育活動を外部委託したりする問題を追記。
また、地域における幼児教育の役割として、小、中、高校生や高齢者などの地域の人たちと日常的に交流する場をつくったり、企業や商店街、農家、図書館などの文化施設と交流したりすることで、幼児教育施設を拠点に地域が活性化することへの期待などにも新たに言及した。
この日の議論では、小学校教育との接続について、複数の委員がさらなる検討課題に踏み込んだ。奈須正裕座長代理(上智大学総合人間科学部教授)は「(幼小が)教育実践を見合う中で小学校の方が、『手はお膝』『お口はチャック』などの規律訓練型の実践をしているとしたら、それを見て共通理解を図ってはいけない。小学校はまだまだ難しいところもあるが、変わろうとしている。(中間整理は)それを促すよう、幼児教育側からボールを強く投げることになると思うので、小学校側の人間としてもありがたいし、望ましいことだ」と、小学校教育の在り方に多くの問題を提起した中間整理案を歓迎。その上で、より小学校側が幼児教育に目を向けるためには「自立した学習者」というキーワードを入れるべきだとした。
また、幼保と小の架け橋期の接続について、古賀松香委員(京都教育大学教育学部教授)は「しっかり取り組んでいる地域では、多様な幼児教育施設が小学校と膝を突き合わせる、対話的で協働的な研修を行うことが可能になってきているが、小学校区、地域によっては中学校区の連携組織を教育委員会がある程度支援的に形成していくことも重要だと思う。連携先が多いと小学校の教員の負担も大きく、今後の学校の働き方改革のさらなる展開も見据えて、連携接続主任を学校単位で置くなど、組織間の連携を担っていく人を位置付ける学校内の組織づくりも検討が必要ではないか」と、効果的な幼保小連携に向けた教育委員会の支援や小学校への担当者の配置を提案した。
中間整理案は、この日の議論を踏まえ無藤隆座長(白梅学園大学名誉教授)に一任の下、さらに加筆修正が行われ、中間整理として取りまとめることが了承された。