日本の小中学生の半数以上が夏場などに体の水分状態がやや不足気味になっているとみられることが、新潟大学と早稲田大学の研究グループによる調査研究で分かった。研究グループは夏の脱水予防はもちろん、それほど暑くない季節も意識的に水分を小まめに取って、体の水分を良好に保ってほしいと話している。
調査研究を行ったのは、新潟大学教育学部の天野達郎准教授と早稲田大学スポーツ科学学術院の細川由梨准教授らの研究グループ。発表によると、同グループは2021年4月と7月に新潟大学附属新潟小学校・中学校(新潟市)の児童生徒のうち、同意が得られた349人を対象に起床時や学校内で都合のつく時間に採尿してもらい、尿浸透圧などを測定した。
体内の水分が減ると尿は濃縮されて尿浸透圧は高まる。調査結果によると、起床時にやや水分不足と判断される基準値を超えた児童生徒は、春は66%、夏は50%に上ることが分かった。春の方が多いのは、夏は日常的に水を飲む量が増えているためと考えられるとしている。また、学校での測定でも同様に、春夏ともに平均値が水分不足とされる値を上回っていた。男女差は認められなかったという。
さらに水分が不足するほど尿の色は濃くなることから、子どもたちが尿の色から自ら水分不足を判断できるか調べるため、尿の色を8段階に分けて該当する色を選んでもらった。8段階のうち4以上が水分不足を示しているが、水分がやや足りないと測定された児童生徒のうち、4以上を選んだのは30%程度だった。
研究グループによると、近年の研究で、世界各国の子どもたちの多くは体の水分状態がやや足りないことが明らかになってきているが、日本の子どもたちの体の水分状態についてはこれまで報告されていなかった。
今回の調査結果から、研究グループは世界的な傾向と同様に日本の子どもたちもやや水分が足りない状態にあることが分かったとし、子どもたちの意識を高めて夏の脱水予防はもちろん、暑くない時期も体の水分を保つようマネジメントの向上につなげたいとしている。天野准教授は「体育やスポーツをした後だけでなく、日ごろから体の水分状態を良好に保つために、水や麦茶などを意識的に飲んでほしい。また、尿の色が濃いと感じたら、少し水分が足りなくなっていると判断して水分を取ることも考えてほしい」と話している。
新潟大学と早稲田大学は、子ども向けに体の水分状態を保つことの大切さを伝える動画「からだと水分」を制作して公開している。こちらのサイトで視聴できる。