学校格差など課題 生成AIガイドライン改訂へ議論始まる

学校格差など課題 生成AIガイドライン改訂へ議論始まる
生成AI利用ガイドラインの改訂に向けて議論を始めた検討会議=オンラインで取材
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 学校現場での生成AIの利活用について議論する文部科学省の検討会議(座長・石川正俊東京理科大学学長)が発足し、初会合が7月25日、オンラインで開かれた。学校での生成AI利用を巡っては昨年7月に暫定的なガイドラインが作成されたが、生成AIによる社会の変革が急速に進む中、年内をめどに現場の課題に対応した改訂版を取りまとめる。会議では、「AI活用に積極的な学校とそれ以外の学校では、別世界というほど差が開いている。国として学校教育での活用について大きな方向性を示すべきだ」などと課題を指摘する意見が相次いだ。 

 生成AIの学校での活用を巡っては、文科省が仕組みの理解や学びに生かす力の育成が重要だとして暫定ガイドラインを作成するとともに、リスクに十分な対策を取ることができるパイロット校を2年間で約100校指定し、各教科の授業などに活用されている。校務でもテスト問題の作成やアンケートの集計・分析に用いられるなど、活用が広がりつつある。

 検討会議は、こうした状況を踏まえてガイドライン改訂などに向けて新たに設置されたもので、文科省の担当者が具体的な論点案を示した上で各委員に意見を求めた。論点案としては、技術の急速な進展を受けて学校現場で新たに留意すべき事項をはじめ、児童生徒が利用する場合と教職員が利用する場合の配慮事項を分かりやすく示すこと、さらに教師のAIリテラシーを育むための政策や教師に求められる役割などが挙げられた。

 これに対して出席した各委員が意見を述べた。昨年のガイドライン作成にも関わった藤村裕一委員(鳴門教育大学大学院学校教育研究科教授)は「技術の進展でいうと、今の学校現場で危機的な状況がある。文書生成AIのガイドラインを示したが現場では画像生成AIも利用され、著作権に触れる可能性が高いなどの問題がある。多様なサービスを整理してタイプごとにガイドラインを示す必要があるのではないか」と問題提起した。

 利根川裕太委員(特定非営利活動法人みんなのコード代表理事)は「多くの学校現場で実践が行われてきており、ガイドラインをゼロベースで作り直す議論が必要と思う。新しい技術は利便性とともに課題もあるが、児童生徒に適切な機会を提供するのが令和の時代の公教育の責務であり、児童生徒がよりよく学習できる未来をつくる議論をしたい」と語った。

 森田充委員(茨城県つくば市教育長)は「AI活用については学校の差がかなり大きく、背景には教員の理解を深める研修が進まず、教員も半信半疑でいることもあるのではないか。研修の事例や活用事例の提供などにしっかり取り組まないと、活用が進まないのでないかと感じている」と学校間の格差の課題を指摘した。

 細田眞由美委員(前さいたま市教育長)も「AI活用はパイロット校とそれ以外の学校では全く別世界であり、この分野はどんどん差が開いている。国として将来を見据えて、AIを学校教育でどう使っていくか大きな方向性をガイドラインで示すことで、AIに恐る恐るという教員や保護者に力を添えることができるのではないか」と述べた。

 吉田塁委員(東京大学大学院工学系研究科准教授)は「いかに先生が安心して動ける環境を提供するかがポイントと思う。研修も重要で、オンラインで行うのも一つの方法だ。AIを巡っては情報更新が速く、情報を提供するウェブサイトを構築して情報を逐次更新できるものがあると、教員が参照できるのではないか」と提案し、自らウェブサイトの作成を考えていることも明らかにした。

 検討会議では、次回以降、事業者や有識者からのヒアリングを行った上で議論を重ね、年内にガイドライン改訂版を取りまとめる方針。

 

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