全国的に子どもの視力低下が進む中、屋外活動の時間を増やすことで子どもの近視発症を予防できる可能性が高いことが、京都大学の研究グループが実施したシステマティックレビューによる分析で、このほど明らかになった。これまでも個別のランダム化比較試験で屋外活動による近視予防効果が報告された例はあるが、複数の試験を統合解釈する信頼性の高いシステマティックレビューで効果が確認されたのは初めてで、研究グループは「重要な知見を報告できた」と話している。
同研究は、京都大学医学研究科の眼科学教室と脳病態生理学講座(精神医学)研究室の共同で行われた。発表によると、世界各地で行われた、学校単位で屋外活動時間を増やしたグループと増やさないグループに分けて近視発症の予防効果を調べるランダム化比較試験などのうち、2022年6月の時点で信頼性の高い5つの試験について、システマティックレビューで統合分析を行った。対象となった児童数は合わせて1万733人に上ったという。
これらの研究結果を統合分析したところ、屋外活動時間を増やすことで、近視の発症率は1年後で2.4%、2年後で4.2%、3年後で9.3%低くなったという結果が得られ、近視の発症予防効果は期待できることが示された。一方、近視の進行を抑制する効果についても調べたが、現時点では結論が出なかったとしている。
子どもの視力低下を巡っては、文部科学省の調査で視力1.0未満の割合が小中高生ともに過去最多に上っており、学校や家庭でスマホやタブレット端末を使用する時間が増えていることなどが背景にあるとみられている。
研究グループによると、今回対象となったランダム化比較試験の中では、屋外活動時間を増やす方法として、授業に屋外活動を取り入れたものや休み時間に屋外で過ごすことを習慣付けるもの、屋外活動を促す動機付けとなるツールの配布などさまざまな方法があり、「日本でも取り入れることが可能なプログラムもあるので、国内で取り入れることも期待できる」としている。
同グループは「屋外活動の増加による近視の進行抑制効果は認められなかったものの、近視の発症予防効果については高い信頼性をもって重要な知見を報告することができたと考えている。今回の分析には日本のデータは含まれていないので、今後、日本でも評価を行っていく必要があると思う」とコメントしている。