福岡県宗像市教育委員会は、地元のトヨタ自動車九州と協力して、生産ラインの無駄を徹底的に排除する「トヨタ生産方式」を学校の働き方改革に取り入れ、教員の業務負担の軽減を進めることを決めた。このほど、モデル校となる同市の小学校で事業をスタートさせた。
同市教委によると、同市が定める1カ月の超過勤務時間の45時間を超える教職員の割合は、2023年度は小学校で約30%、中学校・義務教育学校で約41%に上り、教職員の負担軽減は大きな課題となっている。これまでも離島を除いた小学校の水泳授業の民間委託の実現や、保護者への連絡システム導入などに取り組んできたが、さらに改革が必要だとして、トヨタの生産方式のノウハウを取り入れることを思い立ったという。
同市ではコロナ禍の際、同社の協力で広い会場で効率的に市民へのワクチン接種を進めた経験もあり、今回も快く協力してくれることになったという。無駄を徹底的に排除して生産性を高めるトヨタの生産方式は全国的にさまざまな業種で取り入れられているが、学校現場への導入は初めてという。
7月23日にはこの事業のモデル校になった同市立赤間西小学校でキックオフの会合が行われ、約30人の教職員が参加した。初回は同社社員からトヨタの生産方式について説明を受けるとともに、教員の困り事や課題の洗い出しを行った。教員側からは「年度によって学年主任などが変わり、1年間の計画の見通しを立てにくい」などといった課題が挙げられたという。同日の議論を踏まえて8月初旬に次回会合を開き、今後の取り組みの方向性を定めて具体的な業務改善を進めることにしている。
学校の働き方改革にトヨタ方式を取り入れることを巡り、一部市民から「教育にものづくりの生産性を高めるノウハウを取り入れるのはどうか」などと疑問視する声も寄せられたが、同市教委は「教職員の『事務的な業務』に焦点を当て、工程の見直しや改善にトヨタのアイデアやノウハウを生かして、教職員の負担軽減や業務の質の向上を目指すものであり、子どもたちの指導に直接関係するものではない」と説明して理解を求めたという。
モデル校での働き方改革の成果は来年2月ごろに校長の研修会などで報告される予定で、同市教委はその後、他校の働き方改革へと横展開していくことにしている。