児童虐待対策関係など、児童福祉と母子保健の分野で相談支援を担う「こども家庭センター」について、全国の半数超にあたる876自治体で設置が完了したことが、こども家庭庁の調査でこのほど明らかになった。同センターは今年4月から全国の自治体で設置が努力義務となった。国は2026年度までに全国の市区町村に展開する目標を掲げている。
こども家庭センターは、児童福祉法に基づく子ども家庭総合支援拠点と母子保健法に基づく子育て世代包括支援センターを一元化させ、出産前から子育てを切れ目なく支援する組織。22年に改正された児童福祉法では、市区町村は24年4月から設置に努めなければならないとされ、23年12月に閣議決定した「こども未来戦略」でもこども家庭センターの全国展開を掲げている。
これまで子ども家庭総合支援拠点があった全国約600カ所の地域では、スムーズにこども家庭センターへの移行が進んだとみられる。こども家庭庁虐待防止対策課は、母子保健と児童福祉の両分野での情報共有が進むことで、児童虐待のリスクの早期発見や実効性ある早期支援につながると期待している。
同庁によると、今年5月1日時点で全国1741市区町村のうち、こども家庭センター設置済みが876自治体(50.3%)、未設置が865自治体(49.7%)だった。行政区ごとに設置した政令市など24自治体が複数設置し、全国での設置数は計1015カ所となっている。一方、未設置の865自治体のうち、半数以上の486自治体は設置時期が未定。56自治体が24年度内に設置予定としているほか、274自治体が25年度内に、49自治体が26年度以降に設置予定としている。
設置済み自治体の割合が高い都道府県は、①福岡県98.3%②富山県80.0%③石川県・島根県78.9%⑤熊本県・大分県77.8%。一方、低い都道府県は、①北海道15.6%②群馬県・佐賀県20.0%④鹿児島県23.3%⑤高知県23.5%――となっており、地域差が大きいことも浮き彫りになった。
また、市区町村の人口規模別にみると、人口1万人未満の531自治体では、設置済み117自治体、未設置414自治体で、設置済み自治体の割合は22.0%と低かった。人口1万人以上の自治体では▽人口1万人~10万人未満 57.8%▽人口10万人~30万人未満 79.7%▽人口30万人~50万人未満 80.4%▽人口50万人~100万人未満 66.7%▽人口100万人以上 81.8%――だった。
人口規模の小さな自治体では、もともと子ども家庭総合支援拠点がなく、人員体制のめどが立っていないなどの理由でセンター設置が進んでいないとみられ、同庁は「今後も財政支援を含めて対応し、設置を促していく」としている。
また、センターの業務として地域資源の開拓を掲げており、子育て支援や児童虐待対策に取り組むNPOなど民間団体と連携して、ネットワーク化で地域での子育て支援強化を図る狙いがある。